表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落貌ノ鬼『劔刀、いく世へ消えにし命さえ』  作者: 嵬動新九
第四章 五輪王御劔   ―黎明篇―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/124

四章 十一丁 天罰覿面


 己の配下が取り殺される光景を、愕然(がくぜん)と見上げていた当代の男は、狂乱した様で御鈴姫(みすず)に激しく詰め寄る。


「貴様…!! 何をしたッ!!?」


 御鈴姫は物を発する気力もなく、血の溢れる(ひたい)を押さえ、全身は凍えたように激しく震え上がっていた。半顔(はんがん)は血に染まり、涙と混じって(したた)り落ちる血液が着物を汚し、床には角座(つまさ)から切り落された角が、無残な姿で転がっている。

がたがたと腕が震える度、掌から血が脈打って流れ、恐ろしい怪物を見る目で御鈴姫は当代の男を見上げていた。



文近(ふみちか)様 !!!」


 応じぬ御鈴姫に掴み掛かろうとする当代の背後へ龍が迫り、髭面(ひげづら)の男は主君を突き飛ばし、我が身が餌食となった。


呑まれた男の有様は外表から透かし見え、皮膚は劫火(ごうか)に熱せられた様に肉を(さら)け出し、身体が(むしば)まれようと頭を抱えて暴れる姿は凄惨(せいさん)を極めた。

そして瞬時に骨までも消滅する光景を、当代の男は腰を抜かしたまま声も発せず通し見ていた。



 髭面の男を殺めた白龍は、決死に出口へ逃げる男達を見付けると、目近である御鈴姫らを襲わず其方(そちら)へ首を伸ばす。


二人の男が出口に(すが)り付き、騒動を聞きつけ大扉を開いた門番ごと、龍は唐戸(からど)を破壊した。



「ほぉおぉおお !!! やはり鬼打ちは格別じゃて !! これが五輪王の―――ッ」

「来いッ!!」


 老人は堂内を飛翔する八体の龍を 仰望 (ぎょうぼう)し、足腰が立たず怖気(おじけ)ながらも浮かれ騒ぎ。その側で(すく)み上がっていた男は、老人の腕を引っ掴んで立たせると、岩壁の戸口に飛び込んだ。


 寸分の差もなく、龍は老人らが逃走した戸口を喰い千切った。



 逃げ惑う者達を総じて仕留めた八体の白龍は、持て余した様子で建物を咬み砕き、龍の一体が石像の頭上となる天井を食い破った。


気体の移った瓦礫(がれき)は、真下に位置するネイと黒装束ら二人に降り掛かり、それらを(かわ)そうと動いた一人が、別の個体の関心を引いた。

ネイの左側に位置するその男は真っ先に逃亡し、階下へ飛び降りようと手摺(てす)りに乗り出したところを容赦なく丸呑みにされた。



 落下した瓦礫屑(がれきくず)が頭部に打ち当たり、ネイは遠のく意識を必死に保ち。辺りに散らばる木片を手元へ蹴り飛ばして拾い上げ、木片を昇華(しょうか)させる白色の気体で手鎖(てくさり)を溶かそうと試みる。しかし、炎を模したその気体からは熱を感じず、鎖を弱らせるには至らなかった。



 木片を捨て去り、力業で拘束具(こうそくぐ)を外そうと(はや)るネイの傍で、 獣眼 (じゅうがん)の男は色を失い立ち尽くしていた。


 (たてがみ)(ひげ)を優美に波打たせ、宙を旋回する四体の龍を、手摺りに指を添えてぼうと見下し、――死に(あらが)う気配すらみせぬ男を、龍は側面から呑み込んだ。



 男に喰らい付いた龍の胴体が身体を(かす)め、その風圧はネイを岩壁に叩き付けた。


「…うっ!!」


 その衝撃で 鉄鎖 (かなつがり)が一部外れ、胴体の鎖が(たゆ)んだ機を逃さず左手を自由にしようと力を込める。が、鉄製の腕輪は手首にしっかり()まり込み、胴と手首を繋ぐ鉄杭(てつくい)は力を加えようと深く岩壁に打ち込まれているため微動だにしなかった。


 獣眼の男を襲った龍は、格好の的であるネイを取り逃す筈もなく、空を緩やかに曲がり、獲物を喰らおうと大口を開いた。




©️2025 嵬動新九

※盗作・転載・無断使用厳禁

※コピーペースト・スクリーンショット禁止

※ご観覧以外でのPDF、TXTの利用禁止

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ