表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落貌ノ鬼『劔刀、いく世へ消えにし命さえ』  作者: 嵬動新九
第四章 五輪王御劔 【黎明篇】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/136

四章 七丁  別つ身の再逢


 (さや)から解放された刃は、中心辺りから真っ二つに折損(せっそん)し、その半身である両刃(もろは)の切先は、台座の上に丁寧に(まつ)られている。


 刀を事細(ことこま)かに調べようなど考えも付かなかった御鈴姫(みすず)は、五輪王御劔(ごりんおうみつるぎ)が欠損している事実を知る由もなく。武器としての役割を失った無用の 長物 (ちょうぶつ)に、男達が何故(なぜ)そこまで価値を見出すのか、まるで理解が及ばなかった。



「我等の代で乙外娃(おとあ)から五輪王御剣の半身を奪い取ることが叶おうとは…!! 我等こそ、この刀を(たも)(さだ)めなのだろう! お前を生かしていた甲斐(かい)があった…!」


 この城の当代(とうだい)であろう男は、損壊(そんかい)した五輪王御劔を台座へ置き、(えつ)に浸った様子で 摘巻 (つまみまき)(つか)(さす)る。柄部分を台座へ戻した事で、分かたれた刀身は台の上で重なり、男の手によって再会を果たした。


 そして男は、再び御鈴姫へ向き直ると、己の目的を(ようや)く口にする。


「我等が預かりし半身と、乙外娃が抱へたるこの半身。 これを在るべき姿へ戻し、五輪王御剣を我等に(まつろ)わせよ」


 何の前触れもなく五輪王御劔を修復するよう()いられるが、男の要求にどう応えればよいのか見当も付かない少女はただ狼狽(うろた)えた。


「え……。そんな…こと……、……私…出来ません…」


 御鈴姫の弱々しく発した一言に、男は突如歯を見せて笑い出した。



「はは…はははっ!!! ――お前達! この小鬼に何も教えておらんのか!」


 己の配下達へ当代の男は笑い散らして呼び掛けるが、黒装束達は感情を持たぬ人形の様に、その場に立て通した。



「貴様は乙外娃と祖の同じ、無道(むどう)の血を継ぐ鬼であろうが! だから生かされ封じられてきた。 その鬼が出来ぬとほざくとは…」


 男は笑い疲れると、鬼にあるまじき御鈴姫の言動に飽きが来たのか、深い溜め息を漏らした。



「え…、無道って…」


 悪鬼無道の伝説を思い出し、その血に(つら)なると明かされた御鈴姫は衝撃を受ける。が、男は動揺を隠しきれぬ少女に構わず、再び台座に視線を戻し、つらつらと語りを続けた。


「伝承では…鬼打ちの刀は(あるじ)と認めた者の御前(おんまえ)のみ、その姿を蘇らせ平伏(へいふく)する。 五輪王御剣が依然(いぜん)()(かえ)らぬならば、今世(いまよ)に至りてさへも未だ…使い手が現れてはいないという事」


 不快だと言わんがばかりの様子で、五輪王御劔を見下ろしていた男は祭壇から降り、御鈴姫の元へ歩んだ。



「無道の刀であるこの五輪王御剣を奪い、乙外娃は否でも従わせこれを振るうていた。 その乙外娃に出来たのだ、お前に叶わぬ道理はない」


 言いながら男は御鈴姫の腕を掴むと、立ち上がり損ねた少女の身体を引き()り、台座の前に押しやった。


反射的に手を付き、少女は台座に身を打ち付ける事はなかったが、台の上には分断した五輪王御劔が哀れな姿で横たわり、目前に鋭利な刃物が飛び込んだ恐怖で御鈴姫は台座から離れた。



「さぁやれ!五輪王御剣を(よみがえ)らせよ」


 まごつく少女相手に男は威圧を掛け、()じ恐れる御鈴姫は刀と男を交互に見詰める。



 相手が納得する手段に心当たりがない御鈴姫は、身体が金縛りにあった様にその場を動けず。不毛な時が過ぎゆく最中(さなか)、階上の石壁に(しつら)えられた開き戸が不意に開扉(かいひ)し、何者かが現れた。




©️2025 嵬動新九

※盗作・転載・無断使用厳禁

※コピーペースト・スクリーンショット禁止

※ご観覧以外でのPDF、TXTの利用禁止

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ