表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落貌ノ鬼『劔刀、いく世へ消えにし命さえ』  作者: 嵬動新九
第五章 百鬼夜行   ―江戸跋渉篇―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/122

五章 十四丁 斬の報い



 (えん)にて、始終を静観していた立花(たちばな)は、携帯していた炭の欠片(かけら)煙管(きせる)に入れ、一服つける。手慣れた所作で紫煙(しえん)(くゆ)らせながら、喜兵衛(きへえ)を連れて座敷を後にした片倉(かたくら)の背を見送り、哀切(あいせつ)を拭い去れぬ面持ちのまま空を(あお)ぎ見た。



「ふぅ…、死人(しびと)が出るかと思うたわ」


 縁側(えんがわ)へ出た丹羽(にわ)は、先の悶着(もんちゃく)に冷や冷やといった様子で、立花に声を掛けた。


「立花殿、(わし)の宿でこいつでもどうだ?」


 酒を飲む仕草で誘う丹羽の提案を、すぐに折っては気に障るかと考え、立花は少しだけ悩む素振りをする。



折角(せっかく)だが悪いな。 (よめ)にせがまれて禁酒中でな」

「うむ、そうか。 ではいつまで江戸に留まられるのだ?」


 誘いを断わられたが丹羽は食い下がり、手探りで相手の興味を引き、自国に戻るまでに結び付きを得る切っ掛けをつくろうとしている。


細則(さいそく)を無視する丹羽の不可解な行動に、経験の浅さを見抜いた立花は、指導を()ねてはっきりと一線を引いた。


「心は()むが…俺にはそんな気はないと言っておく」


 面を秘する青年等が、此方(こちら)へ耳を(そばだ)てている気配を感じ取り、立花は丹羽の胸に(ひじ)を付くと声を潜めた。


「あんた新参だろう? それとも男らしいだけか?」


 立花の色っぽい所作に、若齢を(とう)に過ぎた高年である筈の男が、生唾(なまつば)を呑み込んだ。


洒落(しゃれ)にならんぞ、白昼堂々(はくちゅうどうどう)誘い出すなんざ。――よからぬ(うわさ)が立つぜ」


 耳元でそう(ささや)くと、立花はするりと身を離し、理解を促すよう微笑を浮かべる。



 しかし誤解を生む仕草と、人を(たら)し込む雰囲気により、意味を()き違えた丹羽は、老顔を赤らめ、慌てて立花から距離を取った。


「や…やめぬか!老いぼれ相手に…! 人聞き()しい !!」



 (しか)り付けられた事に納得がゆかぬ立花は、小首を傾げながら煙管から最後の煙を味わうと、丹羽へ背を向ける。



「じゃあな、お互い死なないといいな」


 立花は別れを告げてその場を離れ、表口で合流を待っていた白髪の青年と従者を労い、先に戸口を出た。



その後を追う白髪の青年は、去り際に座敷へ残る者達を睨み。青年の鋭い剣幕は、敵意と、誰も信用に値しない事を一同へ告げていた。



 青年とは犬猿(けんえん)の間柄となった加賀爪は、あまりの態度にむっと顔を(しか)め、失せろと身振りで追い払い。がんを飛ばされる覚えのない丹羽と奥村は、不信を(つの)らせた。



「……あの者とは…、関わってはなりませぬ」


 震える声で、ある少年が忠告を発し、咄嗟(とっさ)の事に丹羽が振り返れば、頭巾の隙間から覗く少年の眼差しには、確かに恐怖が宿っていた。そして幾人かの若者らも同様に、悪寒に震え、白髪の青年から目を背けている。



「行こうぜ、重太郎(じゅうたろう)


 立花が促すと、白髪の青年はゆったりと歩み出し、その刺すような眼光から逃れた若者等は一斉に胸を撫で下ろした。


 しかし、丹羽はただ一人、座敷を離れ行く二人組を呆然と見詰める。



岩見(いわみ)といったか…。あの見目形(みめかたち)…――まるで彼奴(あやつ)の生き写しぞ…」


 得体の知れぬ違和感を抱きながら、伝説として語り継がれる岩見重太郎の姿を思い起こし、その背を青年へ重ねた。






©️2025 嵬動新九

草履取りのお話

武士が座敷に上がる際に、大人数が一斉に履物を放置すると玄関が乱れるので、「草履取り(ぞうりとり)」という役職の者が、主人の草履を腰に差すか、懐へ入れて預かっていたそうです。


主人が帰ってくる際には、離れた位置からシュッ!っと草履を投げ、ちゃんと向きを揃えて寄越すのが常識らしく…ほんまかいな!? 逆に失礼では!? …と、拙者は疑ってしまいましたが、ほんとだそうです!


でもよーく想像すれば……ぴたっと揃えたらカッコイイかもしれん!と思えてきました(^_^)

草履取りはめっちゃ練習して技を身につけたそうです、うーん素晴らしい!



※盗作・転載・無断使用厳禁

※コピーペースト・スクリーンショット禁止

※ご観覧以外でのPDF、TXTの利用禁止

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ