エピソード1 初めの0歩
俺の家の前には川がある
小さい川ではない
大きな川だ
家の中じゃ蒸し暑いから散歩でもしようかと思ったときに
目の前の川で溺れかけている子供がいた
自分の中の小さい正義感が体を突き動かし、助けた
のは良かったんだけど
戻ろうとしている時に足が攣りそのまま流されて溺死
そんな流れだったと思う
あまりにもダサすぎて笑えないな
暗い、暗い闇の世界
背中に水が当たる
冷たい
(俺は、死んでいないのか?)
少ししてから
声が聞こえた
急いで駆け寄ってきて
引きずられた
頬が痛い
そこで意識が途切れてしまった
目を覚ますと
木でできた天井だった
隣には子供がいた
子供「わぁ!起きた!」
「父ちゃんに知らせてくるから待っててね!」
走って小屋を出て行った
5分くらいたった後
また、足音がしてきた
子供「父ちゃんはやく!はやく!」
父?「わかったから、走るな、滑るぞ」
バァンと扉が強く開かれた
子供「ほら!起きてる」
父?「よかった、目立った傷はないようで」
おそらく、海に流れ着いた俺を介抱してくれていたのだろう
「ありがとうございます」
二人はきょとんとして話した
二人「話せるのですか?」
そんな、とんでもビックリなもの
ではなくただ単純に俺が異世界人なのにこちらの言葉が話せるから驚かれたようだった
そのあとも少し話すことができた
仕事があるようで次の日から参加させてもらう手引きとなった
今日の収穫は
死んだ記憶があるはずなのに生きていたこと
俺は異世界人だそう (確かに、二人は黒髪ではあったのだが目は赤かった)
そして、異世界人なのに言葉を話せたこと
結果から
俺はおそらく異世界転生をしたこと
そして、その異世界転生をしたときの記憶がなくなっているということ
能力はおそらく翻訳 だが、目標がわからない
どうすればよいのか
もう二つ、わかったことがある
料理は玄米と魚と野菜でご飯があまりおいしくなかったことと
二人は、あまり裕福ではないということ
服の汚れ方などからして、おそらく
父は鍛冶の仕事をしていると思う
とりあえず
恩返しをしなければな
頭が痛いから寝ないと
1日後
体を慣らすために外へ出向いた
初めて、家の外からでた
今の季節は春で
村には家が何世帯か
周りには少し離れたところに竹藪があり、その奥に分かれ道、まっすぐ進んだ先に山があった
そこから流れた川をたどった先に海があり
町の中心には川があり、その間で生活していた
畑はやっているのだが、あまりうまくできているとはお世辞にも言えず
畑の敷地も少ない
海では漁が盛んで、それでこの村は栄えている
牧畜もやってはいるのだが、数が少ない
そして、俺を助けた人の家は案の定たたら製鉄をしていた
木炭を作り、他の町からもってきた鉄を使い鉄を作っていた
村を歩いているだけで一日が終わってしまった
助けてくれた人の所に戻りひと段落をした
何もしない、というのは申し訳がないので
客人だから、大丈夫と止められたのだが
なんとか説得して料理は作らせてもらった
昨日と同じだが、魚と野菜、玄米で作らせてもらった
おいしいらしく喜んでもらえた
少しだけ、居候させてもらう罪悪感が薄れた
今日の収穫
村の全体像が分かったこと
この町にあるもの
そして、助けてくれた人の名前が分かった
お父さんが 「ケラ・フィーゴ」
子供が 「タタラ・フィーゴ」
だった
お母さんの名前はわからなかった
眠りに付こうと思う