少子化対策とか女性の社会進出とか言うけどさぁ
ライトノベルとか漫画とかで、“完璧な女性”っていうのが結構いるわよね。
で、どういうわけか、そういう女性の“唯一の欠点”みたいに取り沙汰されるのが“料理が致命的に下手”だったりする。
アニメにもなった小説「銀河英雄伝説」でヤン・ウェンリーの奥さんになるフレデリカも、副官としては最高級だけど、こと料理に関してはダメダメだった。
ほかにも、「料理だけは作らせちゃならん」ってキャラ、結構いるじゃない?
なんていうか、“実務能力は高いのに生活能力皆無”の例として出てくるのが料理なわけで。
これって、まだまだ根っこのところで料理に女性の価値を見出してる人が多いことの表れなんじゃないかな。
美人でスタイルが良くて仕事も完璧なのに、料理だけはダメって、それってつまり、その人に料理することを期待しているからだよね?
なんで期待するの?
や、“料理が上手”っていうのは、確かに女性にとってセールスポイントになるよ?
でも、それって女性に限らないよね?
なんで“完璧な女性”の唯一の欠点として、ことさらにピックアップされちゃうの?
たとえば、高学歴イケメンで気配りも上手で若くして課長になった男性の欠点として“料理ができない”って挙げられても、「そりゃあ残念だ」ってならないよね?
なんで“完璧な女性”が料理できないと「それは惜しい」ってなるのよ!?
“仕事は完璧な男性”の場合、欠点として挙げられるのは、“女にだらしない”か“女嫌い”か“ずぼらで部屋がゴミ屋敷”ってパターンが一般的じゃないかな。
ゴミ屋敷の一環として、カップ麺やコンビニ弁当の殻が台所に散乱とかはあると思うけど、比重は“料理ができない”じゃなくて“片付けられない”の方だよね。
この辺りが、男女のあり方に対する無意識の思い込みだと思うのよ。
女性の欠点として一般的なのは、“料理”“スタイル”くらいで、“声が甲高い”“肌が荒れてる”とかいうのは出てこないのよ。それは、自分を卑下する時に挙げるものなの。
“手が荒れてる”だと、虐待されてる方のアイコンにもなるしね。
あたしの周囲の人に確認すると、共働きでも料理は奥さんって家が多い。ていうかほとんど。
へたすると、奥さんが残業して遅く帰ってきたら、旦那はビール飲みながらテレビ見てて、夕飯はそれから奥さんが作った、なんて話まであった。彼女は「殺意を覚えたわね」なんて怒り混じりで話してたけど、旦那にはそんなこと期待しても無駄って諦めモードだったわね。
こういう感覚がどうにかならない限り、女性の社会進出は今以上には進まないんじゃないかと思う。
ちなみに、鷹野家では、一緒に手分けして作ることが多い。
夫は、元々一人暮らしで自炊してる人だったし、ぶっちゃけあたしより料理が上手い。
あたしは実家暮らしだったこともあってレパートリーに乏しいし、あんまり新しいメニューにも手を出さないタイプだから、得意なの以外は苦手という、とっても素直な状態。
幸いというか、あたしと夫は味の好みが近いので、その点はあまり苦労していない。
細かい性格の夫と、大雑把なあたしがそれなりにうまくやっていけてるのは奇跡かもしれない。
それは置いといて。
どう頑張っても、子供を産めるのは女だけで、かといって、女なら誰でも産めるってわけでもない。
男女のペアであっても子供ができない(作らないじゃなく)ということは、いくらでもある。
妊娠したいのにできなくて悩んでる人に向かって「子供はまだか」と訊くのは、鬼の所業よ。悪意の有無は関係なく、ね。
あたし自身、子宮周りの病気の関係で妊娠しにくいらしくって、息子を妊娠した時、医者から「妊娠できたのは奇跡だ」まで言われたもの。
実際、自然分娩は無理ってことで、早々に帝王切開で日程組んだし。
出産後、もう1人妊娠・出産するのは難しい(ニュアンス的にはほぼ不可能)って言われた。
そんなこんなで、あたしと夫の間では、2人目は作らないってことに決まったんだけど。
本家に顔を出すと、決まって伯母から「2人目はまだか」って言われるのよね。
ここで「もう産めないのよ!」とかキレてみても仕方ないので、「もういらないかなぁ」って笑ってみせてる。
伯母に悪気は全くなくて、“子供は2~3人いるのが当たり前”って思い込みからきてる発言なのよね。
実際、本家には息子が4人いて、それぞれが2~3人ずつ子供(伯母にとっては孫)がいるって子沢山だからね。
伯母自身、もうじき90歳で、そういう常識で生きてきた人だし。
義母にしても、義姉(夫の兄の妻)の顔を見るたびに「孫を見せて」的なことを言ってた。
義兄夫婦は、あたし達には「子供は作らないつもり」って言ってたから、あたしとしては「また言ってるよ。義姉さん辛いよね」とか思ってた。
義兄のところは、あたし達より結婚が遅かったから、多分、義姉が仕事を休みづらいとか高齢出産を嫌がってるとかだと思うし、それも一つの選択だと思う。
けど、義母としては、やっと結婚した長男の子供が見たいっていう想いも強いんだろう。
義母の気持ちはわからないでもないし、悪意がないのもわかるけど、毎度言われる義姉がかわいそう。かといって、嫁の立場だと、義母をたしなめるわけにもいかないのよ。
義姉の足が義実家から遠のくのも仕方ないと思う。
絶対あたし達夫婦の方が顔出す頻度が高い。孫の顔見世興行って面もあるけど。
でもさ、これ、子供欲しいけどなかなかできない人に言ったら、もう嫌味通り越して拷問だよね。
あたし自身、30近くまで独身だったけど、周りからの「まだ結婚しないの?」圧力はすさまじかったよ。
なんていうか、“女は年頃になったら結婚するのが当たり前”“結婚したら子供を産むのが当たり前”“家事をするのが当たり前”っていうのが思い込みとしてあるんだろうね。
たぶん、意識してないんだろうけど。
で、こういう感覚が“同性婚は(子供が産まれないから)生産性がない”っていう発言に繋がるのよ。
だって、“同性婚だと子供が産まれない”ってことは、裏を返せば“異性婚なら子供が産まれるはずだ”ってことだもんね。
あたしの従姉は、結婚して9年目にやっと子供ができたけど、それまで不妊治療とか必死だった。
あたしは、結婚して2年くらいは新婚気分を満喫したかったから3年目に産んだけど、その間、周囲のプレッシャーはすごかった。
「もうちょっと2人きりを楽しんでからね」って言うと、「そんなこと言ってると高齢出産になるよ」なんて脅してくるの。
母からも「(避妊に)失敗していいんだからね」とか言われたし。
「あたしの計画は完璧よ」って返しといたけど。奇跡の妊娠のどこが完璧な計画だろうね。
あたしみたいに気が強くないと、病んじゃうよ。
もちろん、国としては、少子高齢化は困るだろうし、子供産んでほしいのはわかる。
でもね、今の日本って、計画的な人ほど子供作るの躊躇するんじゃない?
あ、でも、育休の最中に次の子供妊娠して育休明けすぐに産休に入る人みたいな計画的な人もいるけど。
ただ、あれって、周囲の反感めっちゃ買うんだよねぇ。
あたしが、「そろそろ子供作りたいので」って異動希望出して、それが通った後、「妊娠した人がいるから、その人が産休に入れるよう、異動先を入れ替わってくれ」って言われた。
根回ししといたあたしより、できちゃった婚した人が優先されたという事実に、あたしは随分落ち込んだ。
仕事上で迷惑掛けないようにって、色々動いてたのがバカみたいじゃない。
そりゃ、予想もしなかったところから「できちゃった婚で産休」って言われて困ったのはわかるよ。
でもさ、それって「鷹野さんはまだ妊娠してないんだし」って切り捨てる理由になるの?
異動先入れ替わったら、あたし、休めなくなるんだけど! 子供作るなってことなの!? ねえ!?
現実問題として、休み取りやすい部署、周囲からフォロー貰いやすい部署ってね、普通の会社には、そうはないのよ!
産前産後だけじゃない、子供が小さいうちは、急に熱出すこともあるし、朝、急に出勤できなくなることだって多い。
今のご時世、それで文句を言われることはあんまりないけど、陰口たたく人はやっぱりいる。
下手すると、同じ女性でも、独身の若い子や、とっくに子育て終わった(環境が整ってない時期に嫌味言われながら休んだ)人も敵に回ったりする。
こういう、“私の時はそんなことしてもらえなかった”って人もいるんだよね。
羨むだけならいいんだけど、“あんたも私達の苦労を知りなさい”って気持ちの人を相手するのも疲れる。
「時代が違うんですよ」とか言ったらケンカになるからね。
まぁ、実際、急に抜けられると困るのは事実だし。
ただ、それって、インフルエンザとか、交通事故とか、誰にだって起きる可能性があることじゃない。
だからあたしは、いつ急に休んでもいいように、仕事関係は常に“見ればわかる”メモを作ってた。
根本的に意識改革からやらないと、世の中は変わらないよ。