転機
「敵襲!敵襲! ただちにシェルターへ避難してください!!」
突如として学校近くの公園に設置されたスピーカーから放たれた警告音は街中を駆け巡った。
「キャーーーーー!!」
「わたしたち殺されるんだ!いやだ!いやだ!いやだ!」
「おい、どけ!邪魔だよ!」
恐怖のあまり、叫ぶもの、抱き合うもの、逃げ出そうと押し倒す生徒まであらわれた。
「落ち着け!訓練の時のことを思い出すんだ! 全員廊下に出て背の順で二列に並べ!」
ケルト先生は少し声を震わせながらも生徒たちを落ち着かせようと、誰よりも大きな声で叫ぶ。それを聞いた生徒たちは冷静を取り戻し廊下へ一目散に並んだ。
「イース帝国の奴ら、まさかこんな偏狭な街を襲うなんてな・・・・。おいローズ、しょんべん漏らすんじゃねぇぞ。」
ローズの真後ろに並んだケープはにやりとした顔でささやいた。
「ボクは大丈夫だよ。」
「なんだよ、やけに冷静じゃねぇか。まぁ、この街にはA級魔術師団『雷撃』がいるからな。イース帝国の奴らも逃げ出すに決まってるさ。」
そうこうしているうちに生徒たちは綺麗に二列に並び終え、前のクラスが移動するのを待つのみとなった。
「よし!準備はいいかお前ら!避難訓練の時も言ったが、まず魔術実験室の用具置き場に向かい、そこにある床下へとつづく階段を使って一番下まで降りるんだぞ!もたもたすると後ろに迷惑がかかるからな!すばやく移動するんだぞ!」
「ハイ!」
時が経つにつれ、生徒たちは訓練の時を思い出し、平静を保ち始めた。何十回、何百回とやらされた訓練は知らず知らずのうちに彼らのの体に染みついていた。
「落ち着いていこう!」
「いつも通りにな!」
生徒たちの中にほかの生徒を勇気づけようとと声を上げるものが現れ始めた。クラス全体が一致団結し始めた。
ただ、今回は『訓練』ではなかった。
前のクラスが動き始め、自分たちも移動しようと全員が前方をむいたその刹那、とてつもない衝撃とともに不気味な声が響き渡った。
「にがさないにょ~~~~~ん」