成果なし、成果あり。
★勇者視点
俺は勇者の加護が使えなくなったことに気づいてからもしばらく森の中を探索した。
いくら弱くなったからといっても雑魚魔獣どもなら余裕で倒せると思ったからだ。
しかし、どんなに歩いても魔獣に遭遇することなく、仕方なく森の中で一夜を過ごすことにした。
この時は気づいてなかったが、勇者の加護なしで魔獣の森で野宿すると普通は夜行性の魔獣に襲われてしまうため非常に危険な行為なのだが、なぜか何も起きずにぐっすり眠ることができた。
探索2日目も何も見つからない。こんなのは勇者になってから初めてのことだった。
いつもはバカな魔獣どもがひょっこりと顔を出したところを適当な魔法を使って倒していたのだが、今回はその魔獣が一匹もいない。
「どうなってやがる。魔素だけがやたらと濃くて何もいないなんざありえねぇ。」
このままだと成果なしと国王に報告しなければならない、それだけは俺のプライドが許さなかった。
何としても一匹はた殺さないと、でも探索魔法を使っても千里眼を使ってもどこにも魔獣がいない。
食料は2日分しか持ってきてなかったからこれ以上の野宿はできない。
「くっそ、何でなにも出てこねぇんだよ!!!」
結局苛立つばかりで何も見つけられず、俺は森から退散せざるを得なかった。
★狼視点
俺は結界の内部から外を見張れるように要所要所に部下たちを配置し、視点共有を使って全方位を見張っていた。
見張りは思ったより長丁場になったが、夜は土竜たちと魔王様が直々に手伝ってくれたおかげで想像より俺たちの負担は少なかった。
ただ親分が時々冷やかしに来たのはムカついたが。
すると見張りを初めて2日後に勇者が単身でやってきたのを確認した。
あいつは二年ほど前に急に現れたかと思ったら我ら魔獣の森の同胞たちを虐殺していった憎らしい野郎だ。
本当は今すぐにでも突撃してかみ殺してやりたいのだが、奴の力が膨大だ。それに魔王様からの指示で戦ってはならぬのだ。
しばらく見ていると、やつは徐々に苛立ち始めた。どんなに探し回っても俺たちのことが見つけられずに困っているのだろう。
それから勇者は夜になるまで森中を探し回っていたが、疲れたのか暗闇で見えなくなったのかわからないがテントを張り出し、そのまま中に入っていった。
その無警戒な行動に半ば呆れながら見ていると、声をかけられた。
「おつかれだべ!そろそろこうたいするだべよー。」
「おう、モグラか、ありがとう。おかげで助かってるよ。」
「礼なんていらないだべ。おらもみんなの役に立ちたいからやってるだけだからな。」
モグラはそう言うと、部下たちに指示を出し、見張りを始めた。
「じゃあおおかみさんはゆっくり休むだべよー。」
「あぁ、ありがとう。勇者はもう森の中にいるから見失わないようにだけ気をつけてくれよ。」
「なぬ!?了解しただべ!!」
「じゃ、おやすみ。」
俺はモグラにそういってから、おそらくまだねているだろう魔王様に今日の報告をしに向かった。
ただ勇者が森に到着したことを伝えるだけのはずなのに、魔王様に初めて成果を報告できることが嬉しくて気分が良かった。




