腹痛
定時の時間を過ぎ、そろそろ終電もなくなろうかと言う頃、私は未だに自分のデスクでパソコンの画面と睨めっこしていた。
「終わらない、、、おわらないよぉ、、、」
会社に私以外誰もいないことをいいことに大声で独り言を言ってみても、それで仕事が終わる時間が早まるわけでもなく、ただただ虚しくなるだけだった。
「、、、もう嫌だ!帰りたい!!」
でも、目の前の書類を全て放って帰ると明日何言われるかもわからないから、
「早く終わらせよ、、、」
結局やらざるを得ないのだ。
ようやく仕事が終わったと思って時計を見てみると、もう夜中の2時を回っていた。
「はは、過去最高記録だねぇ。ヤッタァ」
なんて、なんにも面白くないことをぼそっと言って、駅近にあるネカフェに泊まるためにせっせと帰り支度をして、足早に会社を飛び出した。
こんな時間だから車はほとんど走っていなくて人通りもかなり少ない。少し寂しく感じるけど、とても静かで私の心を落ち着かせてくれた。
「ま、明日休んで病院行ってみて、それからまた考えたらいいかなぁ」
深夜テンションだからか、一周回ってあっけらかんとした考えになり、眠気と疲れでフラフラしながらもネカフェのある駅の方へと歩き始めた。その時は私みたいな小柄でひ弱な女性がよなよな一人で出歩くことがどれだけ危ないかなんて、全く考えていなかった。
「歩くのだるぅ、、、でもタクシーなんて呼ぶお金なんてないしなぁ。」
なんて独り言を吐きながら私は疲れ果てた体に鞭を打ってひたすら足を動かしていた。ちなみにまだ歩き始めて1分もたっていない。
「畜生、、、何で私だけこんな目に、、、いや、社会人ってみんなこんな苦労を乗り越えてるんだっけ。ははっ、何だよそれ。」
そんなことをぐちぐちいいながら歩いていると、突然後ろから肩を叩かれた。睡眠不足と疲れのせいで注意力が散漫になっていて、後ろに誰かが近づいてきているのに全く気づいていなかった。
「何ですか?私は今疲れてて早く帰りたいんですよ。まぁ、家には帰れないんですけどね、へへっ。」
なんていいながら振り返ると、そこに立っていたのは黒いキャップを目が見えなくなるほど深く被り、マスクをしている男が立っていて。
「う゛ぅ゛、、、え?」
それを確認した瞬間、突然腹部に尋常じゃない痛みを感じた。
「なに、、、が、、、」
腹部を抑えようとすると、ぬめっとした何かが手についたのがわかった。
「あ、、、、う、、、」
そのまま私は倒れみ、痛みに悶えながら少しづつ意識を手放していった。
そうして私は、『川上ゆい』としての一生を終えたのだった




