1-23:決着&陞爵
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23話:決着&陞爵
相手騎士の鋭い太刀筋が迫ってきた。
ニヤッ!
「ソラ!水刃乱舞!」
にゃぁーん!
ズババッ!
パキンッ!
騎士の剣が音を立て折れた。
「私の...負けです」
「この勝負!エレン&アレンの勝利です!」
折れた剣を見て騎士は負けを認め、審判が勝敗の決を採った!
少しの静寂のあと、歓声が沸き立った。
ワァァァァッ!!
騎士がオレの前に立った。
「完敗です。まさか水属性の精霊術も使えるとは...思いもしませんでした」
「切り札は取っとくものですからね。でも使うつもりはなかったんです。試合に勝って勝負に負けたようなものです」
「そう言ってくれると助かる。騎士として、恥ずかしくない試合ができたのか不安だったものでね」
「そんな?!オレが言うのもあれですが、精霊術を斬るなんて驚きましたよ。そういえば自己紹介してませんでしたね。アレンと言います」
「剣技がしっかりとしていれば魔法を斬るという芸当は珍しくありませんよ。フォードと申します。現在はズリーノ伯爵の下で【双剣騎士】として仕えております」
オレとフォード殿は互いに握手をした。その時...
「この役立たず共が!」
いきなり怒声が聞こえてきた。そちらを見てみると、ズリーノ伯爵がこちらへと怒りながら向かってきていた。
負けたことへの苛立ちが良く見える。
「どれだけ高い金で雇っていると思っているんだ!それがなんだこの様は?!」
「申し訳ございません、伯爵。力不足でございました」
騎士団候補の4人中3人は気絶しているため、フォード殿が伯爵へと謝罪した。
「なにが力不足だ!お前は戦闘が開始した際、動かずにいたではないか!あそこで動いていればこちらが勝っていたというのに!」
「それは、隊長の命令で...」
「うるさい!そんなこと私には関係ない...もういい!お前はクビだ!」
!!!
「ズリーノ伯爵」
「なんだ?」
「今、フォード殿をクビ...解雇と申されましたか?」
「そうだ!それがなんだ?!」
「いえ、確認しただけでございます」
「ふん!勝ったからと偉そうにしおって!」
言質は取ったぞ!母を見ると笑顔で頷いた。母もオレが考えていることはわかっているようだ。オレは観客席にいる父を見る。父も頷いている。
よし!
「フォード殿!」
「なんでしょうか?」
「貴殿を我がハイデルブルグで雇いたいと思うのですが、いかがでしょうか?給金や待遇のことは応相談ということで。父であるアルリード男爵からも許可は貰っております」
いきなりの申し出にフォード殿が驚いているが、返答はすぐもらうことが出来た。
「宜しくお願い致します」
オレは再び、フォード殿と握手をした。これで契約成立だ。
「ま...待て!何を勝手に?!」
ズリーノ伯爵が慌てている。それもそうだ。ついさっきまで配下だった者が、いきなり敵方のオレたち側に着いたのだからな。
それに対して、母が伯爵へ話しかける。
「勝手にではございませんよ。伯爵は先ほど、この者を解雇されました。それを私共がスカウトし、フォード殿はそれを承諾した。それだけのことですわ」
「そんなの無効だ!」
「いえ、我が息子アレンが伯爵に再度問いかけられましたよね?フォード殿はクビ...解雇だと。それに対して伯爵は、そうだ...と肯定されました。それはここにいる全員が聞いておられます。もちろんそれは陛下もです...いかがでしょうか陛下?」
ここぞとばかりに母が攻勢に仕掛けている。ここで陛下までも巻き込む強かさ。
「うむ、それは我の耳にも聞こえておった。宰相もそうであろう?」
「ハッ!しかと聞こえておりました」
「うむ。貴族、ましてや上級貴族ともされている伯爵が自ら口にしたことを、ここにきて撤回などせぬだろうな。そうでなければ伯爵としての責任に問題があると言わざるを得ないぞ」
陛下が伯爵に対して、攻めるような言動で話す。これにはサボル侯爵も何も言えないようだ。悔しい顔をしている。
「いえ、そのようなことは...ございません」
「うむ。それであれば、先ほどの言動に対しては目をつむろう」
ホッ
ズリーノ伯爵が少しだけホッとしたような顔をした。しかし、その次の陛下の言葉でまた慌てることとなる伯爵と侯爵だった。
「しかし、騎士団を自分の配下で固めているような言動については看過できることではない。騎士団の中には貴族の支援が少なからずある隊員がいるのは仕方ない。だが、それが隊長、他幹部候補全員というのは認めておらん。あくまでも騎士団は王国の為に存在しており、貴族の為に存在しているわけではない。これは調査をする必要がある。リュウセン軍務卿!調査はお主に任せる。わかり次第報告せよ!よいな?」
「ハッ!かしこまりました!サボル侯爵、ズリーノ伯爵。この後、事情聴取をさせていただく。よろしいな?」
「「......ハッ」」
これを機にある程度の膿を出すつもりのようだな。これで少なからず大人しくなると陛下は思っているんだろうな。
なんか言い様に利用されている感があるけど。まぁ今回は優秀な配下が加わったということで良しとするか。
こうして、模擬戦は幕を下ろしたのである。
舞台は再度、王城の謁見の間。
「模擬戦、大いに楽しませてもらった。【精霊術師】の実力は私が想像していた以上であった。これからも王国の貴族として、領の安寧と王家への忠誠を切に願う」
陛下の冒頭の挨拶が終わり、続けて爵位授与に移る。
「アルリード・ハイデルブルグ男爵、そなたは近年、農業改革を推し進め、魔力式農耕機具である脱穀機などを製作し、それを世に広めた。また、不作が続く土地を豊作の土地へと変化させ、この国全体の農業を発展させた。これは王国への貢献としても多大であると判断し、ここに賞する。これにより、アルリード・ハイデルブルグ男爵を子爵へと陞爵し、隣地であるハウゼン領を下賜する。見事治めてみせよ」
「ハッ!ありがたく頂戴いたします。王命しかと承ります」
ザワザワ…
~ハウゼン領ってあの?~
~不毛地帯だぞ、あそこは~
~いい気味だ、あんなところでは何もできん~
~ハイデルブルグにはちょうどいいのではないか~
ハウゼン領はハイデルブルグの隣である。ハイデルブルグは山に囲まれた自然豊かな土地であり、現在は人口も多くなってきている。
それに対し隣のハウゼン領は何もない。何もないというのは少し語弊がある。この土地に住まう人がいないという意味でだ。
住まう人がいないため、王家直轄領としていた。
なぜ、その土地を貰い受けることになったのかというと、ハイデルブルグの爵位を上げる際には、土地を増やす必要があったようだ。
事前に陞爵されることを聞いていた時に土地の希望はあるかという話を陛下から書状で知らせを受けていた。
変に良いところを貰うと、他貴族からやっかみを受けること必至のため、父と母が悩んでいるところでオレは扱いに困っている土地をもらうことにしたらどうか?それなら、他の貴族からは面倒な土地を押し付けられたと思い、やっかみを受けることもないのでは?と父と母に進言してみたのだ。
ハイデルブルグ領はハーレンブルグ国の南に位置する場所にある。
また、ハイデルブルグ領から王都へと向かう道の途中は全て他の貴族が治めている。西は豊かな土地があり広大ではあるが、子爵領としては大きすぎる。
残りは東ということになるが、国境線が近く、昔は隣国と戦争する際の戦地でもあったことから不毛な土地となっているとのこと。だからこそ誰も住んでいないという土地なのだ。
父と母は、その土地を貰っても意味がないのでは?という意見があったが、よく考えてみて欲しい。
王国から一番遠く、期待もされていない土地がある。さらに不毛な土地であることから住民がいないため税を治める必要がない。
ならば、今からオレたちがその土地を使って好き勝手したところで誰からも咎められることはない。
本来であれば、そんな土地を治めるメリットはないのだから。だから条件としてその土地を開発した際は、税を免除してもらうことにする。
それであれば、あの土地を自由に使うことができる。それこそが最大のメリットだ。
陛下にはその旨を記載した書状を渡して、了承を得た。
こうしてハウゼン領は下賜された。このハウゼン領は父と母にお願いして今後オレが取り纏めることになる。反対されるかと思ったが、すんなりと許可された。
元々、この子爵への陞爵の要因はほぼオレの功績だからというのが理由だ。それにハウゼン領まで見る余裕はないというのもあるらしいが。
これからハウゼン領は開発特区として、オレが学園へ行く前の5年間で下地を作るつもりだ。
とりあえず、これで王都での用事は終わったということだ。
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次話からはハウゼン領、開発へと話を進めていこうと思っています。
まぁ予定ですが・・・




