1-2:ここからすべてが始まる
2話:ここからすべてが始まる
「具体的にどんな【職業】なんですか?」
ミネルバ様に聞いた特徴はこうだった。
精霊術師=火・風・水・土の属性を司る精霊の力を使うことで精霊術を行使できる術師
錬金術師=物質を分解・構築が可能。形・大きさ・材質・工程を全てイメージし、それにあった素材である材料を用意することで、違う物質を作ることができる術師
めっちゃ便利じゃん。さすが神様が創った【職業】で【神職】と言われているだけある。
そんなことを思っていたら、ミネルバ様が勢いよく顔を近づけてきた。
「そうなんですよ!折角、私が文明進歩のための【職業】を創ったのに、あろうことか欠陥職・不遇職と言われて。私は凄い悔しいんです!」
それは悔しいよな。神様自ら創った【職業】が役立たずなんて言われたら。
あぁ、だからその【職業】で見返してほしいって言ったのか。
「そうです!タクミさんがいた世界は文明が発達していて、いろんな物が溢れているので、それを私の世界で生み出してほしいんです!」
なるほど!それは面白い!マンガ本がきっかけだったけど、モノづくりは興味があったんだ。
「錬金術の方は現代科学やモノづくりの知識で何とかなると思いますけど、精霊術の方は、関りが全くないので難しいと思うんですけど・・・」
「それは心配いらないです。精霊術の方は精霊との親和性の適性が高い状態にしますので、精霊とも契約できるようにしておきます!」
凄い自信満々に言うが、それなら、わざわざオレを呼ばないで、異世界の人の適性を高くすればいいのではと思った。
「神が関与できるのは世界を創った最初のみなので、世界に直接関与することは禁じられています」
あれ?ならオレは?
「タクミさんはこの世界の住人ではありませんから。まぁ裏技のようなものだと考えてください。今回は特例みたいなものですから」
深くは追及しないほうがよさそうだ・・・
「それなら私は、その二つの【職業】を貰って、異世界に行けばいいんですね?」
「そうですね。ただ、【職業】は一つだけと決まっているため、この二つの職業を掛け合わした【精錬術師】として送り出します」
「精錬術師?それってありなんですか?」
「基本的には1つの【職業】のみですが、極稀に2つの【職業】を掛け合わした【職業】の適性を持つ者が生まれることもあります。そのほとんどは両親の【職業】を受け継ぐ形になります」
なるほど、つまりは遺伝か…ってことは、まさかオレは転移ではなく、転生をするってことか?
「イグザクトリー!です。それではタクミさん、新しい人生を謳歌しつつ、あなたの前世の記憶・知識を活かして、この世界を自由に発展させてください。遠くから見守っております。では・・・」
「えっ?!ちょっ・・・イグザクトリーじゃなくて・・・って、待って・・・」
ガコン
突然立っていた床が無くなって、落ちていく・・・
「なんで落とし穴ぁぁぁぁぁーーーーー!!!」ヒューンッ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
神様サイド
さて、あとはタクミさんが生まれる場所だけね。【精錬術師】として生まれるためには、【精霊術師】と【錬金術師】の両親でないと・・・
あら!ちょうどいたわね。これが私にできる最後の直接関与になりそうね。さすがに違う世界の人間だからと言うのは裏技とはいえ何度も使えない・・・か。
あなたが来たことで、この世界はどんな文明を築くことになるのか、そしてその過程で何が起こるのか?楽しみにしております。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
某国の某貴族の家
~アルリードという男~
私は、ハイデルブルグ家が治めている領で商いをしているリード商会の次男。
リード商会は不遇職と言われている【錬金術師】の家系であり、多分に漏れず私も【錬金術師】である。
婿としてハイデルブルグ家へ入り、現在は妻であるエレンの家で、アルリード・ハイデルブルグとして妻に変わり対外的には男爵としてこの地を治めている。
そんな人生を歩んでいたが、ついに妻であるエレンが子供を出産するときとなった。
私はただ、待つことしかできずこうしてリビングのソファで無事出産するのを待っている。
オギャーッ!オギャー!
パタパタパタ・・・
旦那様ー!旦那様ー!
バタン!
旦那様!お生まれになりました!
「何?それは本当か?!」
はい!元気な男の子です。
「妻は?エレンは無事か?!」
はい!奥様も問題ございません。母子ともに健康でございます!
「そうかそうか、よかった。もう会えるのか?」
はい、旦那様!奥様もお子様もお待ちしております。
ドタバタ・・・バタン!
「エレン!よく頑張った!」
「あなた、まずはこの子を抱いてあげてください」
「おぉ!そうだったな…ヨシヨシ、この子が私とエレンの子なのだな…精霊はどうなっているんだ?」
「ええ、今はこの子の周りを飛んでいるようです。はしゃいでいる・・と言ったほうが正しいかもしれませんね」
私には精霊を見ることも感じることもできないが、エレンが言っているのであれば、そうなのだろう。
何せ、エレンは欠陥職と言われている【精霊術師】の中でも、下級精霊と契約を結べた一人だからだ。
エレンが子供が出来たと言ったときの驚きは忘れられない。なにせ、精霊が教えてくれたと言っていたのだから。
エレン曰く、契約を結んでいる精霊が突然慌てたようにエレンの周りを飛び始めた。
それに呼応するかのように、他の精霊が何処からかきて、同じようにエレンの周りを飛んでいたようだ。
すると、その精霊の気配がすべてエレンのお腹に集まってきたというのだ。
エレンはまさか、と思い、すぐに【助産師】を呼び、調べてみると子供ができたことを知ったのだ。
エレンも言っていたが、この子はきっと精霊の祝福を受けたに違いない・・・あわよくば、【精霊術師】として親和性が高いことを祈ろう。
私は武力と言われるモノは持ち合わせていないが、エレンを愛している。今後は息子も含めて2人を守っていこう。
~エレン~
私の家であるハイデルブルグ家は代々【精霊術師】の家系であり、精霊と契約できた場合は強力な力を得ることから、王家より男爵の位を賜っていた。
しかし【精霊術師】であっても精霊と契約できる者は少ない。
私はハイデルブルグ家の一人娘として、そして【精霊術師】として生を受け、幸福なことに【水】の下級精霊と契約することができました。
またハイデルブルグ家は女系の家のため、代々夫を婿として迎え入れてきました。
対外的には夫であるアルリードが男爵ではあるが、実際の権力は私が持っている。
しかし、それでも夫は嫌な顔をせず、私を愛してくれている。
そんな愛する夫との間に、子供が出来たというのはとても幸せなことです。
しかも、その子供は女系の家では珍しく男の子だったのだから。
子供が出来たと知ったときの、あの状況は忘れられない。
契約精霊がいきなり慌てたように私の周りを飛び始めたのだから。
しかもどこから来たのか、他の精霊たちの気配もし始め、気づいた時には私の周りには精霊たちの気配で溢れていた。
きっと・・・私たちの子供は精霊に愛されているんだと思う。
もしかしたら、この子はとんでもない子になるかもしれない。
私たちの全てで守っていかなきゃ...この愛する子を。
本話を最後まで読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「次話も楽しみ」など思っていただけたら、とても励みになるので、
【評価】&【ブックマーク】登録をよろしくお願いします。