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1-18:王都へ

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18話:王都へ


コンコン...ガチャ


「父上、お呼びですか?」



オレが部屋に入ると、父と母が席に座っていた。オレも向かい側の席に座ると父が話を切り出した。


「そろそろ王都に発つが、準備の方はどうだ?」



「今レオとセナに準備してもらってます。模擬戦の方でも、鍛冶師に頼んで武器も作ってもらいましたし、オレの錬金術でも模造刀をたくさん作っておきましたから」



「あぁ、あの訓練武器か...まさか錬金術で作った武器を訓練用に活用するとはな」



4年前に錬金術で作った武器は切れ味は皆無だったが、本物とほぼ同じ質感と重量だったことから【護衛士】たちの訓練用として最適だったのである。


それから領の巡回警備隊にも配備した結果、評判は上々だったのだ。


錬金術で作った武器にも一定の価値があったということだ。



「そういえば、その模擬戦だが内容が少し変わったという連絡が来たぞ」



なるほど、それが本題か。でも模擬戦の内容って言っても騎士団との模擬戦としか聞いてないんだよな。どう変わったっていうのか。



「なんでも新しい騎士団を創設すべきだという声があり、当初予定していた騎士団ではなく、その騎士団候補との模擬戦に内容が変わったらしい」



新しい騎士団か。それをわざわざ今こちらに連絡する必要があるのか?



「それで、その騎士団候補との模擬戦で、アレンが負けた場合は軍隊に入ることが決まった」



なんでそうなる。



「その話は母上が断ったはずでは?」



「精霊術師は軍で役立てるべきだと言う考えと、強力な力は軍で管理すべきだという考え、そして普段役に立たないんだから軍で活躍してみせろという考えでサボル侯爵と他貴族複数から嘆願があったらしい。陛下たちは【精霊術師】を重んじてはいるが、その事情を知らない者からすると面白くないんだろう。さすがに、たった一家の男爵を擁護することはできなかったようだ」



「確か軍務卿はこちらを容認していたはずでは?」



「軍務卿は軍全体の長ではあるが騎士団はそれぞれ団長が存在していてな。騎士団候補の団長がサボル侯爵派のようなんだ」



「ということは模擬戦だけど、ほぼ実戦に近い形で来るということですか?」



「まぁそういうことだな」



5年前のお披露目で釘は差したはずなんだけどな。やり過ぎたってことかな。


すると、今まで黙っていた母が口を開けた。



「アレン、遠慮は入りません。【精霊術師】を軽んじる愚か者は徹底的にやってしまいなさい!」



なんと母から物騒な発言が飛び出した。



「そうだな、アレン。【錬金術師】は不遇職と呼ばれていたが、今は風向きが変わってきて、あまり言われなくなってきている。これを機に【精霊術師】の欠陥職と呼ばれている風潮も変えてしまうのも面白いかもしれないな!」



父も追随してきた。



「欠陥職の風潮を変えると言っても、オレだけじゃ意味がないのでは?」



オレだけが活躍しても欠陥職ということは変わらないと思うんだよね。



「そこは、エレンも模擬戦に参加させようと思う。相手が【精霊術師】を軍隊に使いたいというのであれば、エレンも負けたら軍隊に入ると言えば、参加できるだろう。当然負けないだろ?ならこれを機にハイデルブルグ家に余計なちょっかいをかけるなという風にしようじゃないか?どうだ?」



「いいわねそれ!私も今どれだけできるのか知りたいと思ってたし、最近マリンに魔力発散させていなかったから丁度いいわ!」



なんだろう、うちの母も精霊の森で精霊たちと話せるようになってから随分とはっちゃけるようになってきたな。




「あともう一つ話があってな。陛下から各貴族に警戒文が届いた」



警戒文?なんだそれ?



「アル、もしかしてそれは...」



母は何か知っているのか?



「全国各地で魔物が発生しているようだ」



魔物?!確か本には載っていたのを見たことはあるけど、オレはその魔物に出会ったことがない。


一応、本には魔物は自然災害の一種である。と記されていた。


父と母が言うには、魔素スポットと呼ぶらしいんだが、そこから魔物が生まれるというのだ。


魔素が溜まる場所にそのスポットが発生するらしく、数年に一度は複数個所で発見されるようだ。


ただ、そのスポットから生まれてくる魔物の数は多くないらしい。


ただ発生すると被害は出ることから、発生した場合、警戒文が各貴族領に通達されるそうだ。




「滅多に見ることはないけど、一応注意しとくように。領全体にも周知はするからな」



そういうことならレオとセナにも伝えておかないとな。この話がフラグになりませんように。





~数時間後~



王都へ向かって馬車で移動中



「おにいさまとおでかけ~♪」



「ふふっ!リーンは本当にアレンが好きなのね」



「はい!だいすきです!」



「オレもリーンが大好きだよ」



そういうと妹のリーンはオレに抱き着いてくる。前世で一人っ子だったオレとしては初の妹だ。


大いに甘やかしてしまっているという自負がある。くっ、妹が可愛いから仕方ないんだけど。


父が横目でじっとオレを軽く睨んでいるが、甘んじて受けている。何せ父は領主の仕事があり、あまり娘に構ってやれていないのだ。


その分、妹は離れにいるオレのところに頻繁に遊びに来ている。オレが忙しいときはムギとソラとよく遊んでいるのを見る。



「リーンもはやく、せいれいさまとけいやくしたいです」



まだリーン自身は精霊と契約していない。


リーンも去年、洗礼の儀を行い【精霊術師】の【職業】を得たのだ。まだ親和性は高くないため、契約はできない。


ただ心身共に成長すると言われている10才ぐらいで契約できる段階にはいくだろう。


オレとセナは魔力量の問題があったので契約が早かったが、通常は10才~12才ぐらいで契約するものらしいから。



「そのためにもいっぱい勉強しないとな」



「はい、おにいさま!リーン、がんばります!」





それから数日後、王都まであと1日ちょっとのところまで来た頃。



「それにしても、5年前に比べて移動時間が短くなりましたね。あの頃は王都まで1週間は掛かっていたのに。今は5日で到着できるとは」



「ああ、これもお前の馬車のおかげだな。軽量化したことで馬への負担も減って移動速度が速くなったのだからな」



実は、また王都へ行くときに、もう少し移動時間をどうにか短くできないかと考えたのだ。


妹もまだ4歳で小さい。長時間の移動は大変だ。本来なら道を整備すればいいんだろうけど、そんな時間も労力もないからな。


そこで着目したのは馬車自体だ。馬車は木材と鉄をふんだんに使っているから重いんだ。それを軽くできれば移動速度が上がると思った。



馬車に必要なのは軽さと丈夫さだ。



まずは紙の錬成だ。


紙の原料は木材と草だ。まずは草や木材を粉砕し、高温で煮込んだ後、洗い流して異物を取り除く。その後に成型し圧縮して乾かす。


薬品を使っていないので真っ白な紙にはならないが、そこは問題ない。



次に作るのはプラスチックだ。またの名を合成樹脂。


プラスチックは大きく分類して二つの種類に分けることが出来る。加熱すると溶けて柔らかくなり、冷却すると固まる熱可塑性樹脂と通常は液体だが加熱すると硬化して元に戻らなくなる熱硬化性樹脂の二つだ。


オレが欲しいのは、熱可塑性樹脂の方だ。


これは石炭を原料として燃やして気体となった部分を蒸溜し水素を合わせる。


それで作った熱可塑性樹脂を紙に塗って、乾かせばカーボンとなる。


それと馬車の枠部分の木材とサスペンションの鋼スプリングを錬成すれば、新型カーボン馬車の出来上がりだ!


カーボンは鉄に比べて約10倍の強固さ、軽さも約4分の1と言われるぐらいだ。




この馬車を今回使っているのだ。これも5年前同様、行く先々の貴族に紹介をしている。


また陛下に献上してからになるが、帰り道は販売しながらとなるだろう。



5年前のスプリング入り馬車は金貨10枚でレシピを販売しているが、今回のカーボン馬車は金貨30枚だ。


以前の馬車の3倍の値段だが、この馬車には価値がある。何せ移動時間の短縮ができるのだから。


ちなみに前回の馬車は国内のほとんどの貴族や商会に売れたため、100枚ほど売れたのだ。


日本円で1億円だ。今回は前回と同じか少し下ぐらいだと見込んでいるから日本円で2億~3億程と予想している。



ちなみに我がエボルヴ商会は、貴族相手の商品と庶民相手の商品を分けている。


農耕器具など庶民の生活に必要な物は原価に近い安い値段で販売し、貴族相手の高価商品で利益を得ている格好だ。


金はある所から取り、ない所に流し、経済を回していたりする。





そんなこんなで、あと1日ほどで王都に着く距離まで進んだところで問題が発生した。



ワァーワァー!



いきなり外が騒がしくなった。そこに【護衛士】の一人が馬車まで駆けこんできた。



「大変です!」



それに父が反応する。



「どうした?」



「八ッ!魔物の集団が現れました!」




やっぱりフラグだったようだ。

本話を最後まで読んでいただきありがとうございます。


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