1-1:神様からのお願い
1話:神様からのお願い
アナウンス音:
本日はノー残業デーです。18時になりましたので速やかに退社し、家族や趣味などの時間に使いましょう。
カタカタ...カタカタカタカタ...タンッ!
「よし、これで今日の仕事は終了だ!」パタン
今日は水曜日【ノー残業デー】だから定時上がりだ。メールを打ち込みパソコンをデスクにします。
鞄を取り、退社の打刻をする。ピッ!
「お疲れさまでした!お先に失礼します」
オツカレー!
マタアシター!
オレは急いで会社を出て、スマホの電子書籍を開く。何故なら今日は電子書籍版のDr.石の発売日だからだ。ある時、久々に漫画を見ようと手を伸ばしたのがこの本だった。1巻を見ただけでハマってしまった。そこからオレは電子書籍で今出ている全巻を購入して読んだ。
なにせ、文明がなくなった世界を科学の力で取り戻すんだ。その内容を見て、科学って凄ぇって思ってしまうのは仕方がないと思う。
この漫画を読んでから、科学やモノづくりに対して興味を持った。
昔はどんな文明があって、どんな道具があったのか。どうすれば作れるようになるのか?
きっとオレ以外にもそう思った人は少なくないんじゃないだろうか・・・
オレがもっと小さい子供の時にこの本に出会ってたら、そっちの道に行っていたかもしれない。
今となっては、土台無理な話だから、ネットや本で情報収集をしているだけだが・・・
オレは新刊が出るたびに1巻から見直すことにしている。連続して最新刊まで読み進めたいからだ。
会社から家までは電車で1時間と徒歩で15分だ。何度も読んでいる巻は早く見て、家に着いた時ぐらいで最新刊を読むぐらいになっているだろう...
電車を降りて、あとは家まで歩くだけだ。当初の予定通り、この巻を見終われば、あとは最新巻だけだ。
夜の道を歩きながら読む。家まであと少し。最後の信号待ちをしている間も視線はスマホに。その時...
ブォン! キキッ ドン!!
...............
...............
...............
「ウッ、ここは?」
気が付いて回りを見ると、そこはどこかの部屋のようだった。
「起きましたか?」
後ろから声が聞こえた。
振り向くと、そこには女性が座っていた。
「えっと...あなたは?」
「私はミネルバと申します」
「ミネルバ...さん、えっと渋谷 匠です。それで、ここはどこでしょうか?」
「ここは神が住まう場所。そしてここは、その中の私の部屋です」
この人は何を言ってる?神...冗談だろ?
「冗談ではありませんよ」
えっ?今、喋ったか?
「喋ってはいませんよ。タクミさんの心の声を聞いたのです」
「こころ...声?」
「そうですよ」
マジかよ?ホントに神様?!
「えっと、ちなみにミネルバ様はどんな神様なのでしょうか?」
アテネとかゼウスみたいな神様か?さすがに名前からして日本系ではないみたいだけど。
というか、日本にいたのに出てくるのは、日本の神様とかじゃないんだな...
そもそもオレの知ってる神様が実在しない可能性の方が高いか...
「実在してますよ。ゼウス様もアテネ様も、もちろん日本の神様もいますよ」
「マジですか?」
「マジです。ちなみに私は【知】【商】【工】【魔】【医】を司る神の一人です」
へぇ...............うん?
知...知識、商...商業...工業...魔術...医療...女神...ミネルバ...
もしかして?...神話に出てくる、「アテネ様と同一視されてる神様?」
「フフッ、アテネ様とは違いますが、同じ系統の神と思って頂ければ大丈夫ですよ」
マジか...どうなってんだ...この展開...
「えっと、何故オレがここに?」
「思い出せませんか?あなたがここに来る前のことを...」
ここに来る前?...確か仕事を終わらして...マンガの最新巻を...家に帰る途中で...
アッ?!確か信号待ちしてたら、車で!
「思い出したようですね」
「...はい。それじゃあ、オレ...私はもしかすると...死んだという事ですか?」
「そうです」
マジかぁ、死んだのかオレ。まだ最新巻読んでなかったのに...ついてない...
待て待て!とりあえず今オレが置かれている状況を整理しよう。
①オレ死んだ
②ミネルバという名の神様
③神様の部屋
④ココにいる ←イマココ
「すいません、それで何故オレ...私はここにいるのでしょうか?死んだというのなら輪廻転生とかするとかではないのでしょうか?詳しくはわかりませんが、神様の場所に来るとかは普通じゃない気が...」
オレの問いにミネルバ様は少し困ったような顔をして答えてくれた。
「別に言葉遣いは気にされなくて大丈夫ですよ。実は私は、タクミさんが住んでいる世界とは違う世界で神様をしているのです」
まぁ神様なんだから、神様してるのは当たり前だな。そうか、だから日本の神様とかじゃないんだな。
「そこで私は神として、世界を管理しているのですが、その世界に来てほしいと思い、タクミさんの世界を回っていたのです」
「もしかして、その回っている中で私が選ばれたってことですか?」
「そうなんです。ちょうど目についた時に、タクミさんが事故で亡くなったので、あちらの世界の神に頼んで、こちらに寄こしてもらったのです」
「ミネルバ様が目をつけたから、オレは死んだ...とかはないですよね?」
そう聞くと、ミネルバ様は神妙な顔持ちで黙ってしまった。
「......」
「えっ?」
「フフフッ...冗談ですよ」
ビックリしたぁ、神様も冗談言うのか
「それで私がこちらに来た理由なんですけど...なぜでしょうか?」
「それはですね、私が神として管理している世界に来てほしいと思っているのです」
まさかの異世界行きだった。本当にあるんだな、こんなラノベ的展開
「えっと、そこに行って私は何をするんでしょうか?」
勇者として魔王を倒せとかだったら嫌だなぁ。血生臭いのは勘弁です。
「フフッ、その世界には勇者や魔王はいませんよ。種族的には、タクミさんが元いた世界とほぼ同じです」
女神様のような笑顔で、笑いながら話をつづけた。女神様のような、というか、もともと神様でしたね。
「やってもらいたいことですが...」
少しの沈黙のあと、ミネルバ様は恥ずかしそうに話を続けた。
「見返してほしいのです」ボソボソッ
「.........えっ?!」
声が小さくて、うまく聞き取れなかった。
そう思っていると、ミランダ様が顔を赤くしながら、今度はヤケクソのような感じでもう一度言った。
「見返してほしいのです!」
「そ、それで、見返すとは?特別な力とかなんて持っていないですよ?」
「それは大丈夫です。力は私がタクミさんへ授けますので」
おぉ、チートスキルってやつか・・・
「チートとなるかは、タクミさん次第になりますが」
うん?どういうこと?無双してほしいけど、貰える力はチートじゃないってことか?
「いえ、どの能力も使い方次第では...ということです」
あぁ、なるほど。それはそうだな。あくまでも力は使い方次第だもんな。
知識はあっても、その知識を発揮できる場所がなければ意味がないのと同じってことだ。
「そうです。そして、その力の事を話す前に、まずは私が管理している世界について簡単に説明しますね」
そうしてミネルバ様は異世界について説明してくれた。
◆【職業】は多種多様であること
◆【職業】は生まれた後、神様の啓示によって、その者に最も合う【職業】を得る
◆【職業】の中で、二つ、神自らが生み出した【神職】がある
◆【神職】は、極めると世界を動かすことも可能なほど、強力な力を持つ
◆【神職】は、欠陥職・不遇職と呼ばれている
◆【神職】で、文明を発展させる
と、ざっくり説明するとこんなとこらしい。
「その2つの【神職】とは何なんですか?」
「それは【精霊術師】と【錬金術師】です」
えっ?どっちも凄そうな職業なんだけど・・・なんでその二つが欠陥職と不遇職なんだ?
本話を最後まで読んでいただきありがとうございます。
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