謝りたい!
ヤタガラスさんは、話始めた。
どうやら僕は、"デビルフルーツ"というものを食べてしまい、心が悪魔本来の、目的のためなら手段を選ばないサイコパスになっていたらしい。
そして、それを食べさせたのは、サリーという、僕の杖を取り上げようとした張本人の親、サラリス・デイブという有力な貴族らしい。
サリーはヤタガラスさんが行った進級テストの+αで自分の果物を作り、加点してもらっていたため、ヤタガラスさんはそれを知っていて、見てすぐわかったという。
「私の作る紅茶には、貴方にかけられた不当な魔法を解く効能があります。しかし、私不在の上、緑茶を飲んでしまったため、貴方の悪魔化魔法は解けなかったのデショウ。
私の不注意デス。貴方をこんな目に合わせてしまって…。本当に申し訳ございません。
…貴方には、1ランク下がって頂きます。」
僕はずっと聞いていた。苦しそうなヤタガラスさんを見ながら。
目に涙を浮かべたヤタガラスさん。
本当に胸を痛めてくれてるんだろう。
サリーは退学になり、ゼイブ家の権力は剥奪され、僕は1ランク下がって、今回の事態は終わった。
だが、まだ終わっていない。
タクミくんは部屋にも、どこを探してもいなかった。
翌日も、1週間先も、1ヶ月先も、いなかった。
タクミくんは失踪した。
僕は頑張った。
いなくなった勇者の友のため、弁解してくれたヤタガラスさんのため、そして今まで世話をしてくれたアドさんのため。
1年が過ぎた。僕は今、Aランク一級だ。
過去に起きた事件をまた起こさないように、一つ一つ、身に染み込ませるように、魔法を習得し、また騙されないように、実際に使うつもりで、知識を覚えた。
今まで使っていたニワトコの杖はヤタガラスさんに返し、もっと安い、年相応の杖を買ってもらった。予習、復習も自分でやった。
辛かった。でも一番辛かったのは、一緒に昼ご飯を食べる友達がいなかったことだ。
僕の忙しさと反比例して、ヤタガラスさんの外出頻度も多くなっていった。毎回疲れた顔をして返ってくるヤタガラスさんに労いの言葉をかけるものの、その返事は少なかった。
何か悩んでいるようだった。
ある日、アドさんが僕に言った。
「ユウタさん、今までありがとうございました。
今日から、担当が変わります。こちらが、新しい担当です。」
「えっ?!」
突然の申告で驚いた。そして、入って来た男の顔でもっと驚いた。
「…サラリス…!?」