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殺したい!

僕が門をくぐり、瞬間移動魔法を使おうとしたその時、1人の男の人が近づいて来た。


ピシッと白のスーツを来て、胸にはなんかの紋章が付いている。頬骨の出た顔に、ハゲ始めている頭皮。失礼だけど、一瞬ガイコツかと思った。

何かが入った籠を持っている。


「やあ。君は悪魔かな?

今、悪魔だけ無料でリンゴを配っているんだけど、君もどうかな?

実は私は、ある青果会社の社長なんだ。だから高価なリンゴも手に入り放題。もちろん、これは最高級の悪魔リンゴだよ。」


へえ!悪魔限定か!瞬間移動魔法を使う前で良かった。折角だから貰っていこう。


「ありがとう、おじさん!」

「お兄さんだよ」

おじさんが言い終わらないうちに、僕は瞬間移動魔法で帰った。リンゴは美味しくて、すぐに食べ終わってしまった。リンゴにしては、僕の手のひらで包めるサイズで、おかしいなとは思ったが、ここは魔界だ。人間界と作り方かなんかが違うのかも知れないし、何よりそれが、果汁たっぷりにする秘訣とかなのだろう。


今日ヤタガラスさんは用事でいなかったので、僕は使用人に頼んでご飯を作って貰った。もちろん手伝った。

使用人は緑茶を入れてくれた。美味しかった。


朝、起きた時は違和感がなかった。だが朝ごはんを食べた後ぐらいから、なんだか胃を中心に、体がムカムカして、なんだか熱い。


自分の体に冷却魔法を使ったり、直で氷を当ててみたりしたが、変わらなかった。でもそれだけだし、休む訳に行かなかったので、僕はそのまま学校に行った。


…学校に、ついた。頭が痛い。ふらふらする。意識はあるのに、思考が止まりそうだ…。


リンゴをくれたおじさんがいる。おじさんが話しかけてくる。

「やあ、また会ったね、悪魔くん。リンゴはどうだったかな?

あ、そうそう、君はここの学校の生徒だよね?

折角だから、この学校では習わない、裏技的なものがあるから、教えてあげよう。」


おじさんが、僕の耳元に顔を近づける。


「この学校には、いろんな種族が集まる。なりたい種族がいるなら、そいつを殺せ。校長にそいつの首を見せれば、君はたちまち、その種族になれる…。」


…なれる。種族に。勇者…。ユウシャ…。


タクミ…。


「ほら、もう行きなさい。健闘を祈るよ…。」


…コロス、殺す、タクミ、そうしたら、僕は勇者になれるんだ、…。


教室に入る。タクミがいる。ニワトコの杖の先を、タクミに構える。 



「ん、おはようユウタ。どうしたの、杖の先をこっちに向け、てっ…。」


ギリギリでかわすタクミ。もう一回。


「何?!何でこっちに弾丸を飛ばすの?!…殺そうとしてるの?止めてよ!」


僕は無心で打ち続けた。タクミの悲痛な声など、心に届く前に消えてしまう。


タクミも抵抗するが、どんどん逃げ場が無くなっていった。


「なんでこんなことすんだよ!何か悪いもんでも食ったか?」「止めろよ、止めてくれよ!なあ、おい!!」「俺がなんかしたのか?理由は何なんだ?」


理由?そんなの、決まっている。


「お前が勇者だからだよ。僕はお前を殺して、勇者になるんだ。」


「そんなに勇者になりてえのか?!じゃあくれてやるよ、ああ殺せよ!でも、お前はそれで満足か?

そもそも何を救いてえんだ!僕を殺して勇者になったところで、そんなお前が誰かを救えるのか?!俺はそうは思わない。そんなの勇者じゃない!それに、今のお前も!お前はそんなことしない、優しいヤツだったろ?こんなのお前じゃない!!」


救えない?何を言ってるんだ?勇者は救えるものだろ?あれを救うために僕は…

アレ?あれ、アレってなんだっけ?


僕の思考がアレで埋まり、動きが止まった頃、アドさんが入ってきた。


「何をしているんですか?!」

僕はアドさんに引きずられ、生徒指導室に入れられた。


ヤタガラスさんが来る。アドさんから事情を聞く。


胃が疼く。僕は嘔吐した。

吐瀉物の中に、昨日食べたリンゴが消化されずに残っていた。

ヤタガラスさんはそれを見て、アドさんに何かをまくし立てた。

アドさんが出ていき、ヤタガラスさんが僕に、僕の水筒を差し出す。


「忘れ物デスヨ…。」

「ヤタガラスさん、僕は…。」

「今は、何も言う必要はアリマセン。さあ、これを飲みなサイ。」

「…要りません。どうせ紅茶なんでしょ。」

「ええ。今日はウバです。」

「…紅茶ばっかり。たまには、緑茶を飲みたい。」

「なるほど、昨日は緑茶を飲みましたネ。

ほらユウタ、一口だけで構いませんカラ。」


黙ってそっぽを向く僕に、ヤタガラスさんは厳しめの口調で言う。

「ユウタ。屋敷に置く条件の3つ目、まさか忘れてませんヨネ?」

「…はい。」

僕はようやく受け取り、ごくっ…ごくっ…と紅茶を飲む。


すると、僕の体はさっきまでのが嘘のように軽くなり、頭も冴え渡ってきた。まるで、僕の体の中に青々と生い茂る木が生えたように。


「…!ヤタガラスさん、これ…」


「貴方の身に起こったこと、こちらはもう大体見当がついています。今から、お話シマショウ。」

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