勇者になりたい!と思った理由。
Bランクは、流石に難しかった。
授業内容は、とても1日で覚えられる量ではなく、僕はヤタガラスさんと二人三脚でみっちり勉強をした。
そんなこんなで1ヶ月、僕は未だにBで、タクミくんがCに上がった。
「タクミくん凄いね。1人でもうCなんて。」
「そうでもないよ。でもありがとう」
あの日あった気まずさは時間が解決してくれ、僕らはまた以前のように、一緒にお昼を食べながらお喋りに花を咲かせていた。
「いや、タクミくんは真面目で尊敬するよ。授業後は五時間も自主勉してるんだろ?」
「まぁね。一刻も早く、人間界に戻りたいし。親とか、友達とか、今頃どうしてるか…。」
…。親、か。
僕は、親の事はあまり考えたくなかった。いい思い出など、1つもない。代わりに出てくる、嫌な思い出。
昼は飲んだくれの母が眠っている。家事は全部僕の仕事。夜は父親のサンドバッグ。金をどんどん使う母へのストレスが僕に向く。
僕の自由時間は、家事の休憩の間。その時間僕は、マンガを読んだ。バイト三昧で、最近過労で死んだ兄が遺したマンガ。兄は異世界転生モノが大好きだった。
僕はマンガの中の主人公が羨ましかった。誰かを救うその姿は、どのキャラよりも輝いて見え、一層僕の胸を打った。
そして僕は、異世界に行きたいと願うようになった。勇者になり、僕みたいな子を救ってあげたかった。
そして、あわよくば、この世で一番好きだった兄を…。
「ユウタ?おーい、ユウター?」
僕はハッとしてタクミくんを見る。不思議そうな顔をしたタクミくんが、僕の目の前で手をヒラヒラさせていた。
「どうしたんだよ、いきなりボーッとしちゃって。」
「っ、ごめんごめん。ちょっと考え事。」
僕はまた、食べ始める。ヤタガラスさんが作ってくれた、ヤタガラスさんらしいお弁当に目を向ける。
お弁当だなんて、兄以外作ってくれたことなかった。
勇者になりたかった僕は今、悪魔になっている。悪魔じゃダメなんだ。真逆じゃないか。
早く勇者にならなくちゃ。何かを、救いたい。
救える存在になりたい。
水筒の中の紅茶をゴッゴッと飲み干す。
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「あいつだよ、お父さん。ボクを2ランク降格させた原因は。ボク何もしてないのにさ。杖を取ろうとしてきたんだ。」
「そうか。やっぱり黒羽一族は、やり口が汚いな。」
「でもお父さん、どうやって復讐してくれるの?」
「こら、復讐じゃないぞ。これは制裁だ。うちのサリーの頑張りを貶めた、あの小僧へのな。」
「っふ、アハハハ…。あの薄気味悪い黒羽に、お父さんとボク…ゼイブ家の権威を見せつけてやろうよ。」
「そうだな。じゃあサリー。デビルフルーツをお父さんにくれ。あの…悪の心が増幅してって、だんだん心を支配していくやつだ。」
「はい、これ。あっお父さん!アイツが来たよ!」
「っくふふ、これを食ったアイツにあれを吹き込めば、アイツは必ず…」
「明日の朝…。楽しみだね、お父さん!」
「アァッハハハハハ…。」
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タイトルの統一性がなくなりましたが、まだ続きます。