魔法を使いたい!
初日の授業は、マジで退屈だった。
この世界は4つの国で出来ていて対立しているだとか、魔法を使うためには何が必要だとか、他に神界と人間界があるとか、そんなことを1時間ゆっくりやる。
周りが5つの子ばっかだったから、まぁ仕方ねえんだけどさ。
曲がりなりにも僕らは中学生だから、初日の進級テストでいきなり1級をとった。
簡単過ぎた。
アドさんが、飛び級分の知識を詰めた本をくれた。
「明日までに覚えておくようにして下さい。きっとあなた達なら一発で覚えれるでしょう。
明日は、実技の授業と、そのランクアップテストです。では、私はこれで。」
今日の授業が終わり、タクミくんに別れを告げ、僕らは別々の方向へ帰った。タクミくんは夜に力仕事をしながら、宿を転々としているらしい。強いなぁ。
また4時間かけて屋敷に帰ると、ヤタガラスさんが迎えてくれた。
「遅いじゃないデスカ。どこで道草食ってたんデス?」
「いや、ヤタガラスさん。歩いて4時間は聞いてないですよ…」
「え?!貴方…瞬間移動魔法を使わなかったのデスカ?」
「僕、使えません。」
「ええ?!それはすみまセン…今すぐ、お教えしますネ」
その日は瞬間移動魔法を習って終わった。
ヤタガラスさんは教えるのがとても上手く、まるで先生だった。
「そうそう、明日から魔法の実技が始まりますよね?きっと魔法の杖を使うでしょうから、ほら、用意をしておきました。ニワトコの杖を差上げましょう。」
ヤタガラスさんがくれたその杖は、カラスの羽が浮き彫りになったカッコいい杖だった。どこまでもカラス、さすがヤタガラスさん。
こうして初日は終わった。
次の日、僕は昨日教わった瞬間移動魔法を使って学校に行った。短縮できた時間は寝て過ごした。
学校について部屋に行くと、もうタクミくんがいた。
「おはよう、ユウタくん。」
「おはよう、タクミくん。すごいね、もう予習してるんだ?」
「うん。入学試験の日、予習復習はちゃんとやれって、ここの人に言われたろ?」
「え?」
「ん?」
「タクミくんは入学試験を受けたの?俺受けてないけど」
「え?」
「え?」
僕たちは顔を見合わせた。ちょうどその時、アドさんが入ってきた。
「おはようございます。ユウタさん、今日はお早いようで。」
「アドさん、僕は入学試験を受けていないのですが、タクミくんは受けたと言ってます。どうしてこうなったんですか?」
「ユウタさん、貴方は推薦で入ったのです。この学校の教師であり、貴族でいらっしゃる黒羽様から。」
「えっ貴族?!」
「ご存知ありませんでした?」
貴族…。だから屋敷に住んでいるのか。でも、使用人もそんな居なかったし、貴族の屋敷にしては都会から遠すぎないか…。そんなものなのか?
「さあ、もう始業しますよ。そうだ、あなた達、杖は持っていますか?自分たちのを持つまでお貸ししますが…」
「あ、僕はもう持ってます。これ。」
ぼくがニワトコの杖を出すと、アドさんが目を見開く。
「こっこれは…!ニワトコの…?!しかも、オレンジペコーじゃないですか!」
「ペコー?」
「杖関連の店のグレードです。一番下がダスト、いちばん上がオレンジペコー。」
そんないいものをくれたのか、ヤタガラスさん。優しい人だなぁ。
「っ!さ、さあ、もう始まります。教室は2階ですよ、急いで急いで!」
僕たちは急かされて、部屋を出た。
タクミくんは瞬間移動魔法を使えなかったので、一緒に連れてった。
ついに、魔法の実技の方に入ります。最初のうちは、取得スピードを図るためのテストがあり、それが一番飛び級、ランクしやすいです。
それでも硬いのはランクの方です。
杖関連の店のグレードと書いたオレンジペコーやダスト、紅茶のグレードから取りました。