第1話 勇者になりたい!
「君、勇者になって世界を救わんかね?!」
ある日、僕が登校していると、じいさんが誰かに話しかけてるのが見えた。
その後、じいさんがいきなり宙に浮いたり、手からリンゴを煙と一緒に出して食べ始めた。
僕は驚いた。そして何故かこう思ってしまった。このじいさんは異世界から来て、これは、異世界への勧誘をしているのではないか。
そして、こう思った。この人に話しかければ、念願の異世界転生&勇者になれるのではと。
僕は早速、じいさんのところに走っていった。
そこのじいさん、と声を掛けようとした時、つい道ばたの小石に足を引っかけてしまった。走っていた僕は勢いの余り、じいさんを突き飛ばしてしまっていた。
「あ」
思わず声が出る。突き飛ばされて倒れるじいさん。ゆっくり立ち上がり、こちらを見る。その顔は、怒りに満ちていた。
「なんだお前は!!」
怒鳴り付けるじいさん。僕は頭が真っ白になり、言おうとしていた言葉を発しようと動く口を止める事が出来なかった。
「僕を、異世界へ転生させてください!!」
これには流石に、怒り心頭だったじいさんも、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になって、
「………は?」
と、一言だけ言った。
僕にしても、予想だにしない言葉が出てきちゃったものだから、もうしどろもどろになって、
「いやあのですね、異世界に行きたくて声を掛けようとしてつまづいてしまって」
早口でまくしたてる。もう僕も何言ってんのか分からない。
「…なるほど。」
先に冷静を取り戻したじいさんが言う。そして、
「よくわかったな。そうだよ、俺は異世界から来たよ。街中で魔術を使ってしまったからな、そりゃばれるよな。」
「…!本当に?!」
「いいぞ。行かせてやる。目を閉じろ。」
…え?!いいのか?なんか、あっさり過ぎて拍子抜け…。
「…あっありがとうございます!!」
「早く目を閉じろ。時空間に閉じ込められてもいいのか?」
僕は急ぎ目を閉じた。
異世界か…。どんなところだろう。あのマンガみたいな世界かな?それとも、あの映画のような?
僕は一瞬の宙に浮いた感覚のあと、周りの空気が変わっているのを感じ取った。
ゆっくり目を開ける。
目の前には鏡が置かれていた。しかし、うつっていたのは、後ろの景色だけだった。
その景色もまた、紫っぽい色した山や真っ黒な木々、舞い飛ぶ無数の烏や蝙蝠に、人。…人?
夢にまで見たあの勇ましい雰囲気は感じられない。ここはまるで…ダンジョンのなかの1ステージにあるような、そう、魔界のようだった。
「あの、おじいさん。ここは…?」
「ここは魔界だ。」
えっ正解?!
「お前はここで、悪魔として生きろ。」
…え?あくま…?何で…?
「…どうしてですか?」
「俺が勧誘していた少年は、俺を助けてくれた。そのお礼に、チート能力を授け、勇者になってもらうつもりでいた。
なかなか信じてくれなかったから、いろいろ見せて信じさせようとしていたのだが…。
でもお前は、俺を突き飛ばしたよな。まるで対象的だ。だから、悪魔だ。
じゃあ、俺はもう行くから。言っておくが、俺は神だ。こことはまた違う、神界から人間界へ、勇者を作りに来た。
だから、悪魔が嫌になり、俺を捜しても、見つけることは出来ない。
つまり、お前はこの先ずっと悪魔だ、じゃあな。」
それだけを言って、じいさん、いや、神様は消えた。僕は頭を抱えて座り込んだ。大変な事になってしまったと後悔しながら。
その時、誰かがザッ、ザッと足元の砂利を踏みつけながら近づいてきた。
初の連載でございます。