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ピグミの物語  作者: ソノ
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エルフの村 (5)

 




 二、三日して傷の再生を促すエルフのヒールが完治した。深く抉られ毒で腐った肉はくっついて薄く傷跡が残るだけになった。おババの家に泊めてもらっていた私達は、傷の最終チェックをヒスイにしてもらっていた。


「ヒールや毒抜きは私たちエルフの得意分野だけど、実際は体の機能に呼びかけるものなの。人の体には約二百種類もの用途を持つ、違う仕事をするもの達がいるのよ。人の体は約二年でほぼ違うものに生まれ変わってる、皮膚はだいたい一ヶ月でほぼ別の物よ」


「……ヒールをしない傷は?」


「浅い傷なら再生はされる。けど毛穴を超える深い傷は修復までで再生はされないわ、ヒールのように処置をしていないなら綺麗に消えることはない」


 クローサーが上から服を被せてくれた。彼は目を合わさず、荷物を纏めに行った。あの背中の傷は、エルフにヒールをしてもらっていない。その理由を私はまだ聞けないでいた。


「はい、糸が布になりました。これであなたの着たい服に仕立ててもらってください」


 水上コテージのテラスで最後の糸を切り、おババが出来上がった布を畳んで完成したものを私に手渡す。ドワーフに指定した泥染の糸は優しく深みのある黒い美しい絹の布になった。おババの得意の夫婦の鶴の刺繍が太陽に照らされて光沢を放つ。


「ドワーフの土魔法の糸に、私たちエルフの状態魔法を付加させた強い布です。布に意味をもたせて、その用途に合った服にしてください」


「ありがとうおババ」


「いいえ、久しぶりに機織の音をこの村に呼んでくれてありがとう。気をつけて旅を続けてください」


 おババに背守りの刺繍を見せて、私は船に乗りこんで手を振った。クローサーが綺麗な声で歌を歌いながら他の家々を周ってくれる。機織りをしてくれた布を回収するたびに驚く。単色や模様で綴られた絹の布は光沢を持って皆美しいものに仕立ててくれていた。皆一様に貝子糸での機織りは楽しかったと笑ってくれる。


『空の鏡が我が魂を写す。道のバウルよ我が心、一体なにがお前を部屋の片隅に縛り付けるのか。


 嵐が荒れ狂う中、お前の崩れそうな小屋では水がベットの高さまで達しボロのかけ布団はその中で浮いている。小屋はすっかり壊れている。


 それは岸辺のない河。台風が荒れ狂い流れは速い。


 五つのラサ、愛の本質を熟知するものだけが波の駆け引きを理解する。彼らの船は沈まない、愛の櫂を漕ぎ力強く流れを遡る』


 ハートの形をした集落から私達は海に出た。水の上から聖地の住民が手を振ってくれている。朝の海は凪、海面が光の粒を散らす。



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