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プロローグ
この街では雨が降り止まない。
空は延々と暗いままだし、屋外に干した洗濯物が乾くことはない。アスファルトの隅の排水溝にはいつも水が流れているし、川はいつも濁った土色をしている。喧嘩をした人は仲直りしないし、傷はなかなか治らない。雨上がりの虹はかからない。
七宮とは大学で出会った。同回生で幾つかの講義で一緒で、傘がよく似合う、よく笑う明るい女の子だ。二回生でゼミが一緒になってから、付き合いはじめた。
「この街がきらいなの」
七宮は言った。
「じめじめしてるし、川は濁っているし、洗濯物は乾かないから」
「ならどうしてそんなところに住んでるんだ」
僕は尋ねた。
「だって家賃が安いんだもの」
七宮は笑った。