5/125
運命の分岐点3
パチパチと燃える音に囲まれてスタンは思う。
もし搾取する側に生まれていれば違った結末だったろうと。
スタンもアレックスとこれまでの人生に殆ど違いはなかった。
金、食料そして命まで搾取される。
「天国…か、妹はどうしいるだろうか?不幸になってなければ良いが…俺の人生、良い事は何もなかったな…アレックスの様に幸運をつかむ農民がいても良いよな…」
燃える家はスタンの記憶と体を優しく包み込み、そして消していった。
アレックスは親や兄との記憶の証拠が消えていくのを隠れながら眺める。
(村の人々が集まって来たな…ここまで燃えてれば鎮火は間に合わないだろう)
「行くか…」
家の柱が崩れ落ちる凄い音がして、後髪を引かれる思いに駆られたが、アレックスは振り返らず歩いた。