運命の分岐点2
夕飯の支度をしている明かりのが灯る家の間をカラカラと音を立てながら荷台を引いている。
荷台には布が掛けられている為、気に留める村人はいなかった。
アレックスは別に隠すつもりは無かったのだが、兵士はそれを許さなかった。
(まさか…犯罪者…?)
ガタンと荷台が揺れると同時に荷台から微かに呻き声が上がる。
(そうだとしても…)
アレックスは脚が潰れた兵士に殺されない自信はあったので、そこで考えるのをやめる。
村の外れ、素人が補強した後のある家でアレックスは脚を止めた。
「着いたぞ」
アレックスは独り言のように言う。
兵士はそれに応える。
「よし…ベットまで運んでくれ…」
アレックスは兵士をおんぶする形でベットまで運んだ、兵士の顔は青白くなっていた。
兵士「苦労かけて、すまなかった」
アレックス「それで、自由にするって?」
兵士「落ち着いているな」
アレックス「まぁ獣を狩る時の血抜きなどは自分でやるし」
兵士「そうか…俺はスタンリー、仲間はスタンと呼ぶ…もう居ないが」
スタンは悲しい顔をする。
アレックスがいつ本題に入るのか少しイラついた顔をするが、兵士は続ける。
「俺はもう長くない…いや脚の潰れた傭兵など…本題に入ろう、俺のブレストプレートとアイアンソードをやる!…そして家に火を付けろ!ぐっ…」
アレックスは何が言いたいのかわからない顔をした。
「ブレストプレートは予想してたが、なんで火を?」
「法戸籍があるんだろ?火を放てばこの家に死体が一つ…魔法等を使えばわかるが…但の貧乏農家の為に金を払ってまで依頼する奴が居るか?法戸籍は抹消されるさ…まぁ調べた時は運が悪かったと…」
「何が目的だ?知りもしない俺に?…」
「俺も昔…まぁ良いだろ…お前に不利益は殆どない」
アレックスは少し考える。
ドンドンっとドアを叩かれ飛び上がる思いで二人は音源を見る。誰かが訪問に来たようだ。
アレックスは思う
(こんな時間に訪問者なんて…本当に犯罪者ならさっきの計画も調べる可能性があるのでは?)
アレックスがドアを開けるとそこには村長が立っていた。
村長「こんな時間に失礼するよ?」
アレックス「なんか用ですか?」
村長「これをあげようと思ってね」
ジャラっと布の袋が音をあげる
アレックス「なんですか?これ…何故?」
村長「娘が貴族に嫁ぐことになってね…その祝い金さ…私達の仲じゃないか」
村長は上機嫌にアレックスの手に皮袋をぐいぐい押し当てる。
アレックス「おめでとうございます。しかしそのお金は受け取れません」
村長「そうかね?…必要な時はいつでも言いなさい…ただ!」
村長はアレックスの目を睨む
アレックス「わかっています。ソフィアには近付きませんよ」
村長は安堵の表情を浮かべる。
「それでは失礼するよ。いろいろと準備があるのでね」
ドアが悲鳴をあげながら閉まる。
それを確認しアレックスはベットまで戻る。
「どうする?現状に満足か?」
「わかった言う通りにするが、でも何故?」
「天国に行きたいんだ。命を賭けて人を救えば行ける。ただ知っておいてほしい」
「俺はジャイ村のスタンリーだ。君は?」
「俺はアレックス」
「そうか…遺言が自己紹介とは…ふふ、これを渡そう」
スタンはアイアンソードを指差しながら言う。
「それと一つだけアドバイス、最初は突きを練習しろよ?それが一番だ、最初から多くは習得出来ない…よし行け!」