作者と科学部のとある一日〜激闘ッ!数学甲子園ッ!!〜
劇において女性が男性の役を演じることはよくあることだが、その逆である男性が女性の役を演じることは早々めったにないことである。
同様にサラリーマンとはよく聞く単語だが、サラリーウーマンとはあまり聞かない単語である。
そんなところに微妙な男女差別を感じながらも、この僕ことなかたくは日々の生活を何気なくかつ平穏に過ごしているわけだが、……さて、そんな僕の平穏な日々を金魚すくいに使うあのおたまじゃくしのようなものについている紙があっさりと破れるようにぶっ壊してくれたとある日々のことをお教えしよう。
そう、あれは去年の出来事である……。
僕が六時間目まである授業を、眠気を存分なまでに感じ取り、そして終了して掃除をしてそのまま部室へと足を運んだときのことである。
ちなみに僕が所属している部活は、表向きには「科学部」という名を持っているものである。
しかし悲しいかな嬉しいかな、ちなみに僕は嬉しいかなのほうになるのだがこの科学部、実は名前ばっかりな部活である。
この科学部でやっている部活動の内容とは、本来はいろいろな実験をやったりするものなのだが、実のところ実験をする機会など年に片手で数えられるほどであり、「それじゃあそのほかの日はいったい何をやっているんだ?」と問われれば、実のところなんでもありといったところだ。例をあげるならば、部室で各々の部員が持ち込んでくるさまざまな遊び道具を使って遊ぶことである。
そんな科学部とは名ばかりの部活にいる僕だが、そんな僕に……いや、僕たちに史上最大と言える難関が迫って来ようとは、誰もが想像つかないだろう。
僕のそのうちのひとりだった…………。
ガラリ
そんな音とともに部室の扉がスライドされ、現れたのは科学部の部長だった。
そして、部長の口からこんな言葉を聞くことになる。
「数学甲子園に出るぞ」
…………スーガクコウシエン?
聞きなれない単語だ。野球+数学といった異色のコラボレーションが実現しているイベントなのか?
「なんじゃそりゃ?」
当然とばかりに訊くのは平面ぺったんである。僕もその質問をしたかったので特にとめないことにする。
「これだ」
そう言って部長は手に持っていた紙を平面ぺったんに見せる。僕もその紙をのぞき見ると、そこにはマッチ棒数本を使ってどうのこうのしろ!……とかいうなんだかIQサプリチックな例題が書かれていた。
これがどうも数学甲子園とかいうやつの問題らしい。
「こんなの簡単じゃん☆」
と部員の誰かが言った。
自慢じゃないがはっきり言おう。この時点では僕の脳はまったく理解できていなかった。
さらにこの後話が長くなるのではしょって説明すると、どうもこの甲子園に僕と平面ぺったんと部長が出場しなければならないらしい。
ひとり候補がいたのだが、その人は用事云々があってその日はどうもいけないらしいので、その後釜に部長が入ったというわけだ。
それでなぜ僕と平面ぺったんは無条件で出場が決まっていたのかと言うと、単に理系クラスに入っているからである。
だが、あえて言おう。
僕は理数系が大の苦手だ!
それともうひとつの疑問である、なぜ出場しなければならないのか?――そんなのは簡単だ。顧問の教師の気まぐれである。
こういうわけで、僕と平面ぺったんと部長の計三人は、数学甲子園に出場することになった。
……生き恥はなるべくさらしたくないのだがなぁ。自慢じゃないが、さきほども述べたように理系だけど数学にはあまり自信がないぞ。
そしてそのときがやってきた。……来なくていいのに。
何かしら理由をつけて休んでやろうかと思ったが、人数が足りなくなるとその時点で不戦敗だ。
ここで四百万部突破の某人気ライトノベルの少年エスパー戦隊のような仕事が入れば嫌でも休むことができるのになぁ……。
数学甲子園の会場は、甲南大学だった。
僕が「おおッ!これが大学か〜」っとそんな考えに浸る余裕もなく中に入り、そして受付まで済ませてしまった。……本当にやるんだ。
あたりを見渡してみると、あきらかに秀才っぽい人や天才っぽい人しかいないので、僕の不幸気分に拍車をかけている。
自慢じゃないがな、僕たちのメンバーはいたって普通の凡人軍団だぞ?鶏の卵から鶏が生まれるような普通の凡人っぷりだ。鶉の卵からドラゴンが生まれてきてるんじゃないんだ。
――大丈夫かなぁ。この先……。
そんな不安な考えが、僕の頭の中で浮かんでいた……。
さて、なんだかんだで後半になってしまったわけだが、なんだかんだで一話にまとめてしまってもよかったのではないかと思う今日この頃。
そんでもって思ってしまったがために、12月31日たる今日、前後半に分けていた本拙作をひとつにまとめてしまっちゃったりなんかしたりしたわけだ。
まあなんだ。大掃除のひとつさ。
まとめれるものはまとめた方が便利だし、編集作業が微妙に楽になって助かるからな。
閑話休題。後半に入ります。
体力測定で千五百メートル持久走をして、ものの二時間後に筋肉痛の痛みに苦しめられながらひしひしと高校一年生のときと比べて体力が落ちたのだなぁ〜、と感じながらも家に帰宅し、英語Writingの授業のための予習をしてから、この小説を書いているわけだが…………眠い。それが現在の僕ことなかたくの素直な感想だ。
一日八時間は寝ないと僕は授業の途中で戦闘不能になってしまうので早いところ書き終えて夕食食べて風呂に入って寝ようと思っている。
……と、こんなことを書いていれば「書く気ねぇのか?」というツッコミが飛んできそうなのだが、言っておこう。やる気は十二分にありますよ。
例えるならば凝視で空飛ぶ飛行機を墜落させることができるくらいのやる気がありますよ。……さっぱり例えがわからないかもしれないが、僕もさっぱりわかっていないのでおあいこだ!(やけくそ気味に言うのがコツ)
さて、他愛ない無駄話を延々と述べたところで本題に入っていこうか。
数学甲子園……略して数甲。別に略さなくてもいいのだが、現代人はなにかと略をするので試しにしてみることにしただけだ。
ちなみに僕が知っている略語は、ほかにはパパイヤ鈴木を略してパパスというものを知っている。……え?言わない?となりのサザエモンが言ってたんだけど……みなさんが言わないと言うのであれば言わないんだろうね。
ちなみにこの数甲は初め予選が行われて、その予選の順位の上位何組かが本戦に出場できるというものだった。
さてそれはさておき、数甲の第一試合(?)は個人戦だった。
チーム三人各々に問題用紙が配られ、それを制限時間内に解くというものなのだが…………正直に言おう。とんでもなく難しいッ!!
初めのほうは「お、これってけっこうできるんじゃない?」と、淡い期待を抱いていたのだが、さっぱりダメだった。片手で数えられるほどしか正解していないのではないのだろうか……とこのとき思ってしまった。
続いて第二試合目、団体戦だった。
各々のチームごとにひとつの問題を一問ずつ解いていくというものだった。ちなみに問題は六〜八択問題(だった気がする)でその中から答えを選んでいくというものだ。
全部で十二問あり、でたらめに選んでいっても一つ二つは正解できる……確率論的に。
しかし、こんな甘い考えがダメだったのか、事態は確率論を凌駕してしまうものだった。
「……これだろ、これ」
「え?……でもこれっぽくないか?」
「ええぃッ。書けば当たるだろ。これにしよう」
と、我がチームこと“風林火山”はチームメンバーの相性が最悪といっても過言ではなく、各々の意見のぶつけ合い。そして反論するのが面倒臭くなって適当の意見に従って解答するというものだった。運がどうこうという問題ではない気がするな……。
ちなみに“風林火山”はいったい何の略なのかというと「疾きこと風の如く、徐かなること林の如く、侵し掠めること火の如く、動かざること山の如し」であるが、後に平面ぺったんは語り、そしてその語った言葉こそこの“風林火山”に相応しいものだったと認識させられることになるのだ。
そんな凸凹トリオが問題を解き続けた結果、……皆の者、聞いて驚くな。確率論を凌駕した結果になッ!
ずばりッ!十二問中0問正解だッ!!パンパカパーンッ!ヒューヒューッ!ナイスミドルだぜッ!!
…………すんません。現実逃避していました。
「0問って……」
信じられないね。運が悪すぎというかなんというか、悪運が強すぎるんだね。そもそも運に頼る問題ではなく考える問題だった気がするけどそんなことすら忘れてしまうくらいショックだったね。
だけど実のところ、個人戦では結構稼げている自信がある。さきほど個人戦の問題は難しい、とか言ってたが、実のところ結構あっている自信が根拠なしにあった。
……さて、昼食を食べに行くか。
「おまえら、本戦出れそうか?」
それが昼食中顧問の教師が言った一言だった。
はっきり言えるね、NOと。
なにせ団体戦全問不正解の快挙を成し遂げたわけだし。ある意味奇跡だ。
「正直無理っぽいですよ」
僕と平面ぺったんの言葉を代弁して部長がそんな言葉を言った。汚れ役はすべて君に任せるよ。
「でも個人戦は結構いけたと思うぞ」
何とかして僕たちのがんばりをフルにアピールしようと、平面ぺったんが弁護する。
しかし、教師は特に気を悪くしたわけでもなく「まあ、今回がダメだったら次回二年が何とかしてくれるだろう」という感じの台詞を言っただけだった。
いや〜、助かった。逆鱗に触れたらとんずらしようと思ってたんだ。
さて、結果を言おうか。我らが“風林火山”の順位をッ!
…………ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ………………さ〜て、どうなんだろうねぇ〜、我らのチームの順位は。
恐る恐る順位を見てみると……
「……げッ!」
「マジかよ!?」
「……ふ」
鼻笑いがこぼれてしまった。
言わなくてもわかるだろうが、あえて言おう。――――1位だッ!!
はははははははははは…………!!僕たちが本気を出せばこんなものさッ!
だが、どういうわけか1位を取ったにもかかわらず本戦には出られないらしい。――なぜ!?Why!?
……ふ、しらばっくれるのもここまでにしておくか。なあに、ちょっとした現実逃避さ。
つまりは1位さ、下から数えてな。
……なにも言わないでくれ。数甲に出たそのときからオチは決まっていたってことさ。
だが、実のところここで敗退してよかったと思っている自分もある。
その理由は、本戦の問題内容だ。
問題内容は忘れたが、とにかく難しかった問題だった。光だかフィルムだか……そんな感じの問題だったと思う。
とにかく、僕たちの頭では到底理解不能な問題だった。
なお、後に平面ぺったんは語る。
「“風林火山”の略はな、『風のごとく疾くわからなくなり、林の中のごとく迷い、敵の攻撃火のごとく、動けなくなること山の如し』だぞ」
その言葉に、僕は心から同意した。