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義務婚の国で、君を想う  作者: カムロ
第2章 運命を決めるルーレット
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第32話 答えを出さないという選択

ユウトの言葉のあと、しばらく誰も口を開かなかった。

 沈黙はあったが、気まずさはない。

 全員が、同じ問いの前に立っているだけだった。

 最初に口を開いたのは、ミーナだった。

「急ぐ必要は、ないと思う」

 淡々とした声だった。

 だが、その言葉には逃げも誤魔化しもなかった。

「制度は制度として存在してる。でも、私たちは“事例”である前に、人だから」

 調査官としての見解。

 けれど、その視線は終始ユウトに向けられていた。

「判断材料が揃っていない状態で、結論を出すのは合理的じゃない。

 法的にも、感情的にも」

 アイラが小さく息を吐いた。

「……ミーナさんらしいですね。すごく冷静」

「慣れてるだけ。こういう“未確定案件”」

 ミーナは肩をすくめる。

「むしろ、私が一番気になってるのは――

 なんで、私たちだったのか」

 その言葉に、全員の視線が集まった。

「同時発光自体は、前例がないわけじゃない。でも……三人同時で、同じ色は、聞いたことがない」

ミーナはそう言って、首を横に振った。

「偶然が重なった、で片づけるには……ちょっと出来すぎてる。

だから私は、“なぜ私たちだったのか”が一番引っかかってる」

 ユウトは、ゆっくりとうなずいた。

「俺も、それはずっと考えてた」

 一呼吸置く。

「偶然にしては出来すぎてる。

 でも、理由があるなら……知りたい」

 アイラが、少しだけ考えるように視線を落とす。

「正直に言いますね」

 顔を上げ、はっきりと続けた。

「私は、あの光を見たとき……怖かったです」

 意外な言葉だった。

「嬉しいとか、運命とか、そういう前に。

 “選択肢が消える”感じがして」

 ユウトの胸が、きゅっと締まる。

「でも」

 アイラは、視線を逸らさない。

「今すぐ答えを出せって言われたら……正直、困ります」

アイラはそう前置きしてから、はっきり言った。

「でも、先輩がちゃんと考えようとしてるなら。

その途中に、私もいるってことで……いいです」

 その言葉は、重い。

 だが、縛るものではなかった。

「ありがとう」

 ユウトはそれだけ言った。

 それ以上の言葉は、今は必要なかった。

 フレイは、しばらく黙っていた。

 やがて、静かに口を開く。

「……私は、制度の側にいる人間です」

 自分の立場を、はっきりと線引きする言い方。

「同時発光が“例外”であることも、その扱いが難しいことも、理解しています」

 一瞬、間を置く。

「でも」

 フレイは、まっすぐユウトを見た。

「逃げない、という選択をしてくれるなら。

 私は、それで構いません」

 短い言葉だった。

 だが、その奥にある覚悟は、十分に伝わった。

 ユウトは深く息を吐く。

「……正直に言うと、まだ分からない」

 三人の視線が集まる。

「誰かを選ぶとか、未来を決めるとか。

 今の俺には、まだ重すぎる」

 それでも、と続ける。

「勝手に決められるのは嫌だ。

 でも、制度に喧嘩を売るつもりもない」

 言葉を探し、はっきりと告げた。

「だから――

 今すぐ答えは出さない。

 でも、逃げない。話し続けたい」

 それが、今の限界であり、精一杯だった。

 ミーナは、ゆっくりとうなずく。

「それでいい」

 アイラも、小さく笑う。

「先輩らしいです。

 優柔不断って意味じゃなくて」

「分かってる」

 フレイは、ほんのわずかに表情を緩めた。

「……私も、そのほうが安心します」

 結論は出ていない。

 約束でもない。

 けれど――

 同じ問いから目を逸らさないという合意だけは、確かに共有されていた。

 答えは、まだ先だ。

 だが少なくとも今は、誰かに急かされる未来ではない。

 ユウトは、静かに息を整えた。

 待つ。

 それは、何もしないことじゃない。

 考え続けるという、選択だった。

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