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義務婚の国で、君を想う  作者: カムロ
第2章 運命を決めるルーレット
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第4話 再会と、すれ違う視線

ミーナが立っているのは、出口へ続くスロープの少し手前だった。

通路を照らす紫の魔力灯が、金色の髪を淡く揺らしている。


「あ……その、久しぶり、だね」


言葉はそれしか出てこなかった。

けれど声にしてみると、自分でも驚くほど胸がざわついた。


ミーナは静かに一歩近づき、まっすぐこちらを見つめてくる。


「ユウト。やっぱり、あなた……」


近くで見ると、昔よりずっと大人びていて綺麗になっていた。

でも、目の奥だけはあの頃と変わらない。


落ち着いていて、少し読みにくくて。

それでもどこか、懐かしい。


「ミーナ、その……驚いたよ。参加してたんだ?」


「ええ。偶然ですね。あなたも同じ回だったなんて」


ミーナは微かに目を細めた。

その表情は柔らかいのに、どこか探るようでもある。


「あなたこそ、大丈夫でした? 訓練……少し厳しかったでしょう」


「あ、うん……まあ、その。暗いのは慣れてなくて」


言いながら視線が泳ぐ。

さっきまで隣にいたフレイさんのことがふっと頭をよぎった。


ミーナは一瞬だけ、ユウトの視線を追った。

そして静かに首を傾げる。


「……そちらの方は?」


(あっ)


そこでようやく気づく。

フレイさんが数歩離れ、僕たちの会話を邪魔しないよう控えめに立っていた。


「あ、その……さっきペアだった、フレイさん」


フレイさんは軽く会釈する。


「アステルです。先ほどはユウトさんとご一緒させていただきました」


ミーナの表情は変わらない。

ただ、その瞳の奥でほんの一瞬だけ光が揺れた。


「……そうなんですね。

 初対面の方と、あの暗闇で。大変だったでしょう?」


「はい。でも……ユウトさんが助けてくれたので」


彼女のその言葉に、ミーナの視線がわずかにユウトへ向く。


「そう。ユウトが」


その一言には、嫉妬ではなく、

“状況を整理する幼馴染のまなざし”が宿っていた。


なんだか急に気まずくなって、僕は髪をかいた。


「えっと……今日は本当にありがとう。二人とも……助かった」


フレイさんは柔らかく微笑み、ミーナは静かに頷く。


「では私は、このあと報告に戻りますので。

 また……話せるときにでも」


ミーナは落ち着いた足取りで去っていった。


残された空気には、淡い余韻が残る。


フレイさんがぽつりと言った。


「……素敵な方ですね。ミーナさん」


「そう……だね。幼馴染なんだ。

 久しぶりに会ったから、ちょっと驚いてて」


「ふふ。驚いていたのは、ミーナさんも同じだったと思いますよ」


「え?」


「……いえ。なんでもありません」


フレイさんは小さく頭を下げた。


「今日はありがとうございました、ユウトさん。

 また会えるといいですね」


その声はあたたかくて、柔らかくて——

胸の奥がまた少し熱くなる。


「……うん。また」


フレイさんが去っていく後ろ姿を目で追いながら、

僕はひとり息をついた。


(……今日だけで、心の容量使い切った気がする)


訓練よりも、暗闇よりも、

ずっと心拍が落ち着かないまま、

ゆっくりと出口へ歩き出した。

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