アンドロイドはわからない
とうとう「違法自殺志願者」と「セラヴィ」が接触する
空に広がる青い空はどこまでも澄みきっていた。屋上を渡る風が男子学生の髪を静かに揺らす。
一見なんにもない風景、しかし彼がフェンスの向こう側に立っていることでその異質さを出していた。
男子学生は今から飛び降りをするような深刻な顔ではなく、涼しげな顔をしていた。まるでここから落ちたら死んでしまう…ということを理解していないようだった。まさに、男子学生が飛び降りようと足を踏み出そうとしたその時屋上の扉が開く。そこには可愛らしい顔をしている女子生徒が立っていた。
「飛び降りるのですか?」
「そうだよ」
お互いの名前も知らない状態で交わしている会話は驚くほど軽く自殺の話をしているようには思えない。雑談のようだ。
「…今日転入してきて職員室が分からないんです。案内してもらえますか?」
「君もしかしてそれで引きとめてるつもりなの…?」
男子学生はくすりと笑みをこぼしフェンスを飛び越えた。
「いいよ、案内してあげる」
「ありがとうございます」
男子学生はなんとも美しい顔をしていた。こんなに綺麗な顔をしているなら人生困ることはなさそうと「セラヴィ」は思った。
「そういえば君、転校生だっけ?名前なんていうの?」
そう男子学生に問われた時、「セラヴィ」は先生に言われたことを思い出した。先生とは、「違法自殺志願者」をカウンセリングする先生であり「セラヴィ」も人間にどう接するのが良いのか教わった。
先生は「セラヴィ」は人間のように接した方が良いと言った。「セラヴィ」は公にされていないし、対象に「違法自殺志願者」に寄り添うアンドロイドと言ったって警戒されると思うから…と。
「市杵島セラです」
人間に馴染める名前にするため「セラヴィ」という名を全部使うのはやめて一部だけを名乗ることにした。
「へぇ〜、いい名前だね」
本当にそう思っているのかと問いたくなるほど適当な返事、さっき死のうとした彼に声をかけた時も心拍数も体温も平常で動揺することもなかった。彼は死ぬことに対する恐怖心があまりないように感じる。
おそらく、生きることにも死ぬことにも興味がないのだろうと分析した。観察データから彼を判断するに、興味や関心が極端に乏しい。この会話も彼にとってあまり意味のないことなのだろう。「違法自殺志願者」に寄り添うアンドロイドとして事前に彼のことは書類で確認済み…彼の血液型、生年月日、体重、身長など全て把握している。しかし会話の流れを考えるにここは名前を聞き返すのが自然だろうと思いセラは口を開いた。
「あなたのお名前は?」
「ん?俺の名前?あきらだよ」
苗字も名乗らないテキトーさは、彼らしいと感じた。会話が終わり静寂が訪れる。二人は無言のまま廊下を歩いたのち目的の職員室に着いてしまった。
「ここが職員室ね〜、じゃ」
ひらひらと手を振りながら去ろうとする彼を見放す判断をした結果、屋上に戻る可能性98.8%…このままでは使命が果たせないと冷静に考えた。この場合興味の喚起、対象の関心度が極端に低い場合、予想外の刺激に介入が最適解。予想外の発言:友達申請。成功率89.9%…
「あきらさん、私と友達になりましょう」
そう言って手を出したセラに、振り返った彼はわずかに目を見開き
「君って顔に見合わず大胆で面白いね、あきらでいいよ」
そう言って屋上に上がる階段とは別方向に歩いて行ったのだった。
友達になったあきらとセラ
「セラヴィ」であるセラはどうやってあきらを説得擦るのだろうか




