表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/24

第8話:救出作戦42%

1/6

深夜のセーフハウス。


港の方から聞こえる低い汽笛が、妙に遠く感じられた。


蓮司はソファに腰を沈め、両手で髪をかきむしる。


「……くそ、なんであのタイミングで」


朝比奈は壁際に立ち、腕を組んだまま視線を落とす。


光の声は、いつになく硬かった。


《監視カメラ映像、近隣の交差点までは追跡可能ですが……そこで途切れています》


2/6

真鍋の机からは、未整理の資料とUSBメモリが見つかった。


中身を確認した光が、ディスプレイに数枚のデータを投影する。


《薬剤コード、搬送ルートの記録……そして、一部の患者ID》


朝比奈が画面を見つめながら呟く。


「……これ、証拠にはなる。でも真鍋が掴んでた全てじゃない」


「ってことは、残りはあいつの頭の中か……」蓮司は拳を握った。


3/6

光のアイコンが淡く明滅する。


《スケールアイシステム、起動します》


次の瞬間、セーフハウスの壁一面が暗く沈み、無数の光の粒が浮かび上がった。


赤い矢印が血流のように脈打ち、橙の輪がたゆたう。


全体は呼吸するかのように明滅し、まるでプラネタリウムの夜空を見上げているようだった。


光が新しいマップを表示する。


《位置情報と監視網の解析結果を統合しました》


朝比奈がマップを覗き込み、険しい声を出す。


「……病院から直接じゃなく、いったん外部施設に連れて行ってる」


《院内で始末すれば足跡が残ります。まず港湾の外部施設で隔離し、持ち出した資料や記録媒体を回収。

その後、安全が確保されてから“処理”する——そういう二段構えの動きです》


蓮司は奥歯を噛みしめた。「……なら、まだ間に合う」


4/6

光が表示を切り替える。


地図上に、港湾エリアの一角が赤く点滅していた。


《ここ。真鍋のGPSタグ反応が一瞬だけ復活し、すぐ消えた座標です》


朝比奈は迷わず頷く。「囚われてる可能性が高い」


「でも、守りは固いはずだ」蓮司が低く言う。


《内部構造と人員配置は、残り時間で可能な限り割り出します》


5/6

蓮司は深く息を吸い込み、吐き出した。


「3人で行くぞ」


朝比奈が視線を向ける。「……やれるのか?」


「やるしかねぇだろ」


光のアイコンが淡く明滅する。


《救出成功率、現状でおよそ42%》


「上等だ」蓮司は短く答えた。


6/6

窓の外では港のクレーンがゆっくり動き、夜の空気が重く漂っている。


テーブルの上で、真鍋のUSBが無言のまま転がった。


その時、光が再び口を開く。


《追加情報。2日後、港湾警備の交代要員が半日遅延予定です。


また、定期点検で監視カメラの三割が停止します》


朝比奈が顎に手を当てる。


「……つまり、守りは普段よりも手薄になる」


《その条件を組み込めば、救出成功率は——78%》


沈黙ののち、朝比奈はゆっくり笑った。


「78か……それくらいあれば余裕だ」


「……必ず連れ戻す」


その決意に、蓮司も強く頷いた。


光の声が静かに響く。


《では、救出作戦を開始します》

※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・名称などとは一切関係ありません。作中に登場する病気(双極性障害など)の描写は、物語上の演出として描かれています。実際の病気については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ