第8話:救出作戦42%
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深夜のセーフハウス。
港の方から聞こえる低い汽笛が、妙に遠く感じられた。
蓮司はソファに腰を沈め、両手で髪をかきむしる。
「……くそ、なんであのタイミングで」
朝比奈は壁際に立ち、腕を組んだまま視線を落とす。
光の声は、いつになく硬かった。
《監視カメラ映像、近隣の交差点までは追跡可能ですが……そこで途切れています》
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真鍋の机からは、未整理の資料とUSBメモリが見つかった。
中身を確認した光が、ディスプレイに数枚のデータを投影する。
《薬剤コード、搬送ルートの記録……そして、一部の患者ID》
朝比奈が画面を見つめながら呟く。
「……これ、証拠にはなる。でも真鍋が掴んでた全てじゃない」
「ってことは、残りはあいつの頭の中か……」蓮司は拳を握った。
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光のアイコンが淡く明滅する。
《スケールアイシステム、起動します》
次の瞬間、セーフハウスの壁一面が暗く沈み、無数の光の粒が浮かび上がった。
赤い矢印が血流のように脈打ち、橙の輪がたゆたう。
全体は呼吸するかのように明滅し、まるでプラネタリウムの夜空を見上げているようだった。
光が新しいマップを表示する。
《位置情報と監視網の解析結果を統合しました》
朝比奈がマップを覗き込み、険しい声を出す。
「……病院から直接じゃなく、いったん外部施設に連れて行ってる」
《院内で始末すれば足跡が残ります。まず港湾の外部施設で隔離し、持ち出した資料や記録媒体を回収。
その後、安全が確保されてから“処理”する——そういう二段構えの動きです》
蓮司は奥歯を噛みしめた。「……なら、まだ間に合う」
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光が表示を切り替える。
地図上に、港湾エリアの一角が赤く点滅していた。
《ここ。真鍋のGPSタグ反応が一瞬だけ復活し、すぐ消えた座標です》
朝比奈は迷わず頷く。「囚われてる可能性が高い」
「でも、守りは固いはずだ」蓮司が低く言う。
《内部構造と人員配置は、残り時間で可能な限り割り出します》
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蓮司は深く息を吸い込み、吐き出した。
「3人で行くぞ」
朝比奈が視線を向ける。「……やれるのか?」
「やるしかねぇだろ」
光のアイコンが淡く明滅する。
《救出成功率、現状でおよそ42%》
「上等だ」蓮司は短く答えた。
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窓の外では港のクレーンがゆっくり動き、夜の空気が重く漂っている。
テーブルの上で、真鍋のUSBが無言のまま転がった。
その時、光が再び口を開く。
《追加情報。2日後、港湾警備の交代要員が半日遅延予定です。
また、定期点検で監視カメラの三割が停止します》
朝比奈が顎に手を当てる。
「……つまり、守りは普段よりも手薄になる」
《その条件を組み込めば、救出成功率は——78%》
沈黙ののち、朝比奈はゆっくり笑った。
「78か……それくらいあれば余裕だ」
「……必ず連れ戻す」
その決意に、蓮司も強く頷いた。
光の声が静かに響く。
《では、救出作戦を開始します》
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・名称などとは一切関係ありません。作中に登場する病気(双極性障害など)の描写は、物語上の演出として描かれています。実際の病気については、必ず専門の医療機関にご相談ください。




