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第19話:種明かし

1/6 

2日前——セーフハウス


榊原が持ち込んだ「院長・出張予定表」を光が解析していた。


《このスケジュール、更新履歴が不自然です》


朝比奈が眉をひそめる。「改ざん?」


《はい。2日前に急遽書き換えられた形跡。更新端末の使用者は——堂島本人》


真鍋が低く呟く。「完全に罠だ」


蓮司は顎に手を当てて考え込むと、口元をわずかに吊り上げた。


「じゃあ、その罠に乗っかって、逆にひっくり返す」


光が一瞬沈黙した後、淡く明滅する。


《可能です。ただし“外”から同時に証拠を突き付ける必要があります》


朝比奈が頷く。「真鍋と由衣は、さとり同盟を動かして製薬会社との接触を監視してくれ」


榊原は真剣な表情で「了解です」と答えた。

2/6 

作戦開始前、光がモニター越しに告げる。


《さとり同盟、全チャンネルをセーフモードで展開。現場以外のメンバーは情報収集に専念》


暗号化チャットの通知が次々と鳴る。


《第7病棟で使われてる薬剤ケース、港の倉庫にも同型あります》


送信者は会員No.42。港湾労働者を装い、現場写真を送りつけてきた。


その直後、新しい通知が割り込む。


《金融取引ログの断片を入手。受取口座は——東雲記念病院》


発信者は会員No.17——元銀行員。匿名化された残高スクリーンショットには、数千万単位の資金が不自然に流れ込む痕跡が映し出されていた。


そして、別の会員からのメッセージ。


《製薬会社幹部が堂島院長とホテルで会ってた。音声データ送る》


真鍋がファイルを開き、スピーカーに切り替える。


真鍋の眉が僅かに動く。


榊原は思わず口元を手で押さえた。


その言葉は、医療の仮面を剥ぎ取り、人間をただの「消耗品」として扱う冷酷さだった。


室内の空気が一瞬で凍りつく。


誰も言葉を発せず、ただ心臓の鼓動だけが異様に大きく響いていた。

3/6 

今日20:10


(病院応接室)


東条が赤ワインのグラスを傾け、低く囁く。


「代金は“例の口座”へ送金済みです。ご確認いただけましたかな?」


堂島院長はグラスを置き、薄く笑みを浮かべる。


「確認済みです。データは今夜中にまとめてお渡しします。……これで互いに約束は果たされる」


東条の瞳がわずかに光る。


「ええ。これで“計画”は、次の段階に進む」



(院長室・蓮司&朝比奈サイド)


ちょうどその瞬間、蓮司が引き出しの奥から封筒を引き抜く。


中には通帳と口座番号・振込記録が並ぶ明細書。


「……記帳内容、確認」


光の声が重なる。《外部音声と内部資料、完全一致》


4/6 

(病院応接室)


『薬剤はヴェルジオンのコードG7……次回分は倍で発注いたしました』


盗聴された声が、静まり返った部屋に流れる。


榊原が眉をひそめ、小声でつぶやいた。


「……G7です。」



(院長室・蓮司&朝比奈サイド)


その声に合わせるように、朝比奈がモニターの薬剤リストをスクロールする。


「……あった。コードG7、確かに数量が倍になってる」


光が即座に解析結果を重ねる。


《発注日付も密談と一致。これは偶然ではありません》


5/6 

光が両現場のデータを一つの画面に統合。


口座記録・治験記録・発注記録・音声データが一本のラインで結ばれ、赤く点滅する。


《これで外部と内部、両方からの証拠が揃いました。包囲網完成です》


その瞬間、蓮司のポケットでスマホが震えた。


画面には「証拠データ同期完了」の文字と共に、赤いアイコンが点滅している。


小さな通知音が部屋に響き、緊張した空気を鋭く切り裂いた。


蓮司は画面を一瞥し、深く息を吸う。


「……よし。これで逃げ道はない」


6/6 

現在時刻——院長室


「……罠にかかったのは、あんただよ」


蓮司の言葉に、堂島の眉がわずかに動いた。


次の瞬間——ドアが乱暴に開かれる音。


「動くな! 警察だ!」


刑事たちが一斉に突入し、堂島の優位は一瞬で崩れ去った。

※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・名称などとは一切関係ありません。作中に登場する病気(双極性障害など)の描写は、物語上の演出として描かれています。実際の病気については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

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