第18話:罠の裏側
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「……罠にかかったのは、あんただよ」
蓮司の言葉に、堂島の眉がわずかに動いた。
次の瞬間——ドアが乱暴に開かれる音。
「動くな! 警察だ!」
灰色のスーツ姿の刑事たちが一斉に雪崩れ込み、室内の空気が一変する。
堂島の口元から余裕が消え、代わりに困惑の色が浮かぶ。
「……どういうつもりだ。私が何をしたというんだ」
《正確には、あなたが“隠してきたこと”です》
光の冷ややかな声が、室内の緊張をさらに尖らせた。
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堂島の余裕が一瞬で崩れ落ちる中、
「あんたらの今の会話は全て録音させてもらったよ。堂島院長」
背後から落ち着いた声。
蓮司が一歩前に出て、スマホの画面を堂島に突きつける。
「こっちも忘れないでください」
朝比奈がタブレットを差し出す。
画面には第7病棟の患者記録、治験ログ、薬剤コードの一覧——どれも院内専用端末から直接引き出したデータだ。
「病院のサーバーにアクセスして全部コピーしました。もう外部にも送信済みです」
《送信先は、あなたが止められない安全圏》光が重ねる。
堂島の表情が、初めて露骨に揺らいだ。
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刑事が二人に近づき、声を張る。
「東雲記念病院院長・堂島義政、そしてヴェルジオン製薬執行役員・東条浩一。
あなた方を業務上過失致死および医薬品医療機器法違反の疑いで逮捕します」
金属の手錠がカチリと閉じる音が、院長室に重く響いた。
——その音に合わせて、蓮司が低く吐き捨てた。
「……終わりだ」
堂島は顔を歪め、なおも足掻くように叫ぶ。
「私は医療を救った英雄だ! 犠牲なくして進歩などありえん! 私を捕まえれば、この国は後退するぞ!」
その言葉に、蓮司は一歩踏み出し、真っ直ぐに睨み据える。
血走った瞳の奥に宿る怒りが、刃のように鋭く光った。
「——英雄じゃない。お前は、ただの犯罪者だ」
その瞬間まで支配していた威圧感は、音を立てて崩れ落ちていく。
堂島は顔を歪め、東条はなおも冷笑を浮かべていたが、その両手は無力に縛られていた。
蓮司は二人を真っ直ぐに見据え、低く言い放つ。
「……こっちも手の内を全部は見せてなかったってことだ」
《ゲームオーバーです、院長。そしてあなたも——東条》
光の声が冷たく重なった。
二人の視線が鋭く返ってきたが、もうその立場は完全に逆転していた。




