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第15話:残された影

1/6

港のセーフハウス。


テーブルの上には、第7病棟から持ち帰ったデータと薬剤写真が並んでいた。


光のアイコンが揺らぎ、静かな声が囁く。


《スケールアイシステム、起動》


一瞬、照明が落ちたかと思うほど暗くなり——


次に目を開けると、壁も天井も消え去っていた。


夜空のような虚空に無数の光が瞬き、赤と橙の線が星座を編む。


それは機械の投影というより、夢の奥に踏み込んだ錯覚のようだった。


榊原は思わず息を呑んだ。


「……星座みたい……」


真鍋は低く笑みを漏らす。


「いや……星図じゃない。これは、生きた構造だ」


蓮司は拳を握り、短く呟く。


(——これが、全貌か)


光がそれらをホログラムで投影し、淡々と状況を整理する。


《解決済みの項目——》


青いリストが浮かぶ。


•第7病棟の存在確認(地下階・鍵付きエレベーター)

•未承認薬の有無(ヴェルジオン製薬の海外治験薬と一致)

   • 搬送記録


「これだけでも、黒はもう確定だな」蓮司が低く呟く。


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続いて赤いリストが現れる。


《未解決の項目——》


•投与対象者リストの全容


•治験失敗例と被害者数


•未承認薬剤の投与記録リスト


•資金流入の痕跡


•堂島とヴェルジオン製薬の癒着経路


•政治的見返りの証拠


  •未承認薬剤の配送ルート


朝比奈が顎に手を当てる。


「……つまり、まだ核心を突く証拠が足りないってことね」


その瞬間、光が赤いリストの中から三つの項目だけを強調表示した。


• 資金流入の痕跡


•堂島とヴェルジオン製薬の癒着経路


•未承認薬剤の投与記録リスト


《——この三点が揃えば、堂島義政は確実に落ちます》


室内に一気に緊張が走った。


「動機、手口、証拠。……全部揃うわけね」朝比奈が低く言う。


だが次の瞬間、光の声が少しだけ低く揺れた。


《ただし、これらはスケールアイシステムではでの届かないところにあります》


榊原は小さく頷き、唇を噛みしめる。


「つまり、現物の記録を入手するか院内サーバーに潜り込む必要があるってことはですね」


真鍋は険しい顔をする。


「——奪いに行かなきゃならないってことか」


蓮司は赤く光る三つの項目を睨みつけ、拳を固く握った。


「決まったな。次は——堂島の喉元を狙う」


光のアイコンが淡く明滅する。


《標的は院長・堂島義政。……次の一撃が、決定打になります》


3/6

真鍋は椅子にもたれながら、目を閉じたまま口を開く。


「堂島は、外部じゃなく院内で指示を出すタイプだ。奴の部屋に、何か残ってるはずだ」


「院長室、ってことか」蓮司が眉をひそめる。


《リスクは最大値ですが、核心に最短で辿り着けます》光が補足する。


4/6

朝比奈はゆっくりと椅子を回し、蓮司と真鍋を順に見た。


「やるなら一撃で。二度と同じルートは使えない」


蓮司が薄く笑う。「じゃあ、その一撃を当てる準備だな」


榊原も静かに言葉を足す。「……私も動きます」


5/6

光が院長の顔写真と名前を大きく映し出す。


《東雲記念病院・院長、堂島義政——次の標的です》


港の夜風が窓を揺らし、重い沈黙が落ちる。


蓮司の瞳が鋭く光った。


「——ロックオンだ」


6/6

東雲記念病院・院長室。


豪奢なデスクの前で、堂島義政が一枚の報告書を読み終える。


「……潜入?」


部下が小さく頷く。「第7病棟のデータが一部抜き取られた形跡があります」


堂島は静かに立ち上がり、窓の外の夜景を見下ろした。


「構わん。……どうせ、網はすでに張ってある」


机の電話を取り、短く命じる。


「——次は、こちらから仕掛ける」


※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・名称などとは一切関係ありません。作中に登場する病気(双極性障害など)の描写は、物語上の演出として描かれています。実際の病気については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

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