第11話:囚われの声
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隔離室の扉を押し開けると、室内の空気は消毒液の匂いで満ちていた。
真鍋が手錠でパイプ椅子に固定され、顔には擦過傷と打撲の跡が残っている。
目が合った瞬間、かすかに笑った。
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朝比奈が工具で手錠を外し、蓮司が肩を支える。
「立てるか」
「問題ない。だが急げ——」
真鍋の声は掠れていたが、まだ芯があった。
「お前ら、映画のヒーロー気取りか?」
「ヒーローなら、もっとかっこよく登場してる」蓮司が苦笑する。
真鍋は小さく鼻で笑った。
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三人は急いで廊下を引き返す。
朝比奈は迷いなく先を進み、蓮司はその背を追いながら通路の壁に指先を触れた。
壁越しに響く足音。
金属に触れる軽い音。
——それらが警備員の位置を教えてくれる。
「……角を曲がる、二人いる」
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角を抜けると、粗末な鉄扉の前に立つ二人組が背を向けていた。
朝比奈がわずかに前傾し、一歩で間合いを詰める。
片手で一人目の口を塞ぎ、もう一方の腕で首を極める。
音もなく崩れ落ちる体。
二人目が振り返るより早く、蓮司が背後から肩を掴む。
そのまま壁へ押し付け——偶然にも腕をねじる形になり、ナイフを落とさせた。
「おっとっと!」と情けない声が漏れる。
「……今の狙った?」朝比奈が小声で問う。
「たぶん」
《意図的動作ではありません》光が冷静に指摘する。
「そういうのは黙っとけ!」
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緊張が一瞬ほぐれ、三人は再び走り出す。
倉庫の迷路のような通路を抜け、搬入口の足場へ。
潮の匂いが濃くなり、夜風が頬を打った。
真鍋が低く呟く。
「……生きて外に出られるとはな」
蓮司は息を切らせながら笑った。
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小型ボートに飛び乗り、静かに港を離れていく。
背後で倉庫の灯りが遠ざかる。
真鍋は膝の上で拳を握り、かすかに笑った。
蓮司は振り返り、呟く。
「遅れた分を、取り返すぞ」
夜風が波を裂き、ボートは闇に紛れて消えていった。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・名称などとは一切関係ありません。作中に登場する病気(双極性障害など)の描写は、物語上の演出として描かれています。実際の病気については、必ず専門の医療機関にご相談ください。




