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第11話:囚われの声

1/6

隔離室の扉を押し開けると、室内の空気は消毒液の匂いで満ちていた。


真鍋が手錠でパイプ椅子に固定され、顔には擦過傷と打撲の跡が残っている。


目が合った瞬間、かすかに笑った。


2/6

朝比奈が工具で手錠を外し、蓮司が肩を支える。


「立てるか」


「問題ない。だが急げ——」


真鍋の声は掠れていたが、まだ芯があった。


「お前ら、映画のヒーロー気取りか?」


「ヒーローなら、もっとかっこよく登場してる」蓮司が苦笑する。


真鍋は小さく鼻で笑った。


3/6

三人は急いで廊下を引き返す。


朝比奈は迷いなく先を進み、蓮司はその背を追いながら通路の壁に指先を触れた。


壁越しに響く足音。


金属に触れる軽い音。


——それらが警備員の位置を教えてくれる。


「……角を曲がる、二人いる」


4/6

角を抜けると、粗末な鉄扉の前に立つ二人組が背を向けていた。


朝比奈がわずかに前傾し、一歩で間合いを詰める。


片手で一人目の口を塞ぎ、もう一方の腕で首を極める。


音もなく崩れ落ちる体。


二人目が振り返るより早く、蓮司が背後から肩を掴む。


そのまま壁へ押し付け——偶然にも腕をねじる形になり、ナイフを落とさせた。


「おっとっと!」と情けない声が漏れる。


「……今の狙った?」朝比奈が小声で問う。


「たぶん」


《意図的動作ではありません》光が冷静に指摘する。


「そういうのは黙っとけ!」


5/6

緊張が一瞬ほぐれ、三人は再び走り出す。


倉庫の迷路のような通路を抜け、搬入口の足場へ。


潮の匂いが濃くなり、夜風が頬を打った。


真鍋が低く呟く。


「……生きて外に出られるとはな」


蓮司は息を切らせながら笑った。


6/6

小型ボートに飛び乗り、静かに港を離れていく。


背後で倉庫の灯りが遠ざかる。


真鍋は膝の上で拳を握り、かすかに笑った。


蓮司は振り返り、呟く。


「遅れた分を、取り返すぞ」


夜風が波を裂き、ボートは闇に紛れて消えていった。

※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・名称などとは一切関係ありません。作中に登場する病気(双極性障害など)の描写は、物語上の演出として描かれています。実際の病気については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

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