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相談相手

 夏休みに入ってから、幼馴染の鈴木凛子の家を訪ね、2人きりで話す機会を作った。

「凛太朗があたしに聞きたいことがあるなんて珍しいね。なっとしたん?」

凛子は僕にそう聞いた。

「金子由嘉さんってどんな子?」

僕はそう聞いた。そう、僕は由嘉さんのことが色々と気になって、由嘉さんのクラスメートの凛子に相談したのだ。凛子は女子と騒いだりはしないし、サバサバしているけど秘密は守ってくれる。

「金子由嘉ちゃん?ああ、あの子めっちゃええ子やよ。誰にでも優しいし、絶対に人の悪口は言わへんし」

凛子はそう答えた。

「やっぱり女子から見てもそうなんや」

僕はそう安心した。

「まあ、あくまでもあたしから見ると、やけどね。もしかして凛太朗って、由嘉ちゃんのことが好きなん?」

凛子にそう聞かれて、正直に

「ああ」

と答えたが、少し恥ずかしくなった。

「大丈夫。誰にも言わへんから。それに、あたしも由嘉ちゃんのことは大好きやから」

凛子がそう話したので、僕は思わず

「え?」

と言ってしまった。いや、凛子がそんな趣味ではないことは知っているが…。

「そんな顔するなよ。凛太朗と同じような気持ちで由嘉ちゃんを見とるわけやないから」

凛子がそう苦笑いした。

「ごめん、そうやよな」

僕は慌ててそう謝った。

「ええよええよ。それより、何で由嘉ちゃんのことを知っとんの?」

凛子にそう聞かれた。

「一緒に図書委員の仕事をしとるから」

僕はそう答えた。

「ああ、そうやったな」

凛子はそう納得した。

「逆に、由嘉さんが1年の頃から僕のことを知っとったんが不思議やった」

僕はそう話した。

「そう?凛太朗は女子からモテてるから学年の中では有名やで。由嘉ちゃんがイケメンってだけで食いつくとは思えへんけど」

凛子はそう教えてくれた。モテる?有名?イケメン?僕の頭の中では「?」でいっぱいになった。

 そして凛子は

「あんま関係ない話やけど、うちの学年の三大イケメンがいるらしくて、その中の1人が凛太朗らしいよ」

と続けた。僕の頭の中の「?」がさらに増えた。気になって思わず

「その三大なんとかのあと2人って誰?」

と聞いた。

「確か、サッカー部の中村と、バスケ部の三浦やったと思う。あたしもよく知らんけど、女子の中ではそう言われとるみたい」

凛子の話に、

「そうなんや」

という言葉しか出なかった。女とはよくわからない生き物だ。

「そうや、由嘉ちゃんの話やった。由嘉ちゃんのどんなとこが気になる?」

凛子がそう話を戻してくれた。

「由嘉さんって、どんな男子が好きなのかなって。ホラーが好きとは言ってだけど」

僕はそう話した。

「由嘉ちゃんは、ずっと好きな人がおらんらしいけど」

凛子のその言葉に

「じゃあ、僕のことも好きやないってことか…」

と寂しく思い弱気になった。

「まだ諦めなくてもええよ。もしかしたら、由嘉ちゃんの初恋の相手になれるかもしれへんのやで?」

凛子はそう励ましてくれた。凛子は前向きでいいな。尊敬するというより、羨ましい。

「でも、由嘉さんのことやから、吸血鬼みたいな男が好きなんかな?それともいかにも男らしい男が好きなんかな?とか想像しても、全部自分とはほど遠くて…」

それでも僕は弱気なままだった。

「吸血鬼みたいって、どんな男のこと?」

凛子がおかしそうに笑った。

「例えば、クールでミステリアスで蒼白い顔してて、どこかワイルドみたいな感じ?」

僕はそう話した。

 凛子はまた笑うかと思ったが

「そうかもしれへんな」

と納得された。

「4月の自己紹介のときに好きな音楽はパンクやハードロックって話してたから、そんなグループのメンバーがタイプかもしれへん。そりゃ、そんなのやってるってだけで、性格はそれぞれやろけど」

と凛子は話した。そして、

「少なくとも、テンションが高い男子は苦手やと思うよ」

と続けた。それには僕も

「ああ、うちのクラスで言うと金田みたいなやつ?」

と返した。それに対して凛子は

「そうそう!」

と同意した。

 僕はこのように凛子からの同意がほしいだけで、質問したいわけではないのかもしれない。そう思いながらも、話を続けた。

「仮に由嘉さんが吸血鬼みたいな男が好きやとして、やっぱり僕は論外やろな」

「何で?凛太朗は他の男子よりクールやし、顔だって蒼白いやん」

凜子はそう返した。なんか、いらんことを言われた気がする。確かに僕の顔は蒼白いし、日本人離れしているけど。

「いや、僕はクールでミステリアスっていうより、陰湿なだけやから。意地悪やし、腹黒いし」

僕は、またそう弱音を吐いた。こう話していること自体が陰湿な証拠だ。

「でもそれって、自分で思っとるだけやろ?単純な女子は、凛太朗の容姿だけで落ちるみたいやで。あたしはないけど」

凛子からはそう言われたが、もしそうだとしても全然嬉しくない。

「それに、由嘉さんが男の中の男が好きと仮定しても、やっぱり僕は当てはまらないと思う」

僕はそう口にした。

「女子から見たら、優しそうと思われるみたいやね」

と言う凛子の言葉に今更思い出した。凛子は僕と幼馴染だから、他の女子とは視点が異なるのだった。

「優しいだけではあかんよな。いや、本当は全然優しくないし」

と言う僕の言葉に凜子は

「いや、そこは否定しなくてもええやろ。でも、由嘉ちゃんみたいな女の子は優しい感じの男よりも熱い男の方が好きかもしれへんな。みんな、自分に足りないところを持っている人に惹かれるって言うし」

と告げた。

「磁石のプラスとマイナスはひっつくけど、プラス同士、マイナス同士は離れるみたいな?」

僕はそんな話を挙げてみた。

「そうかもね。もちろん、似た者同士気が会うってこともあるけど」

凛子の言葉に納得した。ただ、由嘉さんと自分が似ているとは思わない。

 パズルのピースに例えると、僕にかけているところと由嘉さんの持っているピースは合うけれど、由嘉さんに欠けているところを合わせられるピースを僕が持っているのかということだろう。欠けているところは人それぞれだから。お互いに欠けたところを補い合えるとは限らない。

「でも、どんなに想定して分析しても、行動せんと変わらへんよ?断定なんてできへん。あれこれと計算して振る舞うのはよくないと思う」

凛子にガツンと言われた。そうだ。あれこれ考えているだけでは変わらない。凛子の言葉通り、計算なんてしない方がいい。

「そうやな。正直に向き合ってみる。今日はありがとう。これは、そのお礼」

僕はそう言い、事前に買っていた凛子の好物のレモンケーキを手渡した。

「そこまでせんでええのに。でもせっかくやから貰うな。ありがとう。上手くいくとええな」

凛子はそう嬉しそうだった。

 そうして凛子の家を出ようと思ったが、一つ気になることがあった。

「ごめん、最後にもう一つ聞いてもええ?」

「ええけど何?」

凛子が不思議そうに聞いた。

「由嘉さんってモテる?」

「どうやろ?いかにも騒がれてはないけど、密かに可愛いって思われるタイプかもしれへんな。あたしの勝手な予想やけど」

凛子って鋭いな。容姿は可愛いし、喧嘩は男子にも負けないほど強いしで最強だ。男っぽいけど女の洞察力もあるなんて怖いものなしだ。

「そっか、ありがとう。頑張ってみる」

僕は改めて凛子にお礼を言い、帰宅するのだった。

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