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卒業式

 今日は卒業式の日だ。いつも通り通学する中でハゼが

「もうこの学校に行くのも最後になっちまったな」

と口にした。その一言に、僕も少し寂しさを感じたが

「でも、これからは一緒に駅へ行くんやろ?」

と聞いた。それには対してハゼは

「ああ、もちろん。別々の学校に通うわけやけど」

と返した。

 3年3組の教室に入るとイクラが突然

「りんちゃーん!」

と叫んで僕の胸に飛び込んできた。僕は強く抱きしめられたので苦しくなった。

「ちょっと離せ。苦しい」

僕はそう言ったがイクラは離さず

「最後に同じクラスになれて良かった」

と口にした。それに対して僕は

「それは僕もや。お前がアホなことを言ってくれたおかげで僕は笑ってこられた」

と、褒めているのかけなしているのか疑われそうなお礼を口にした。

「相変わらずやね。こうしていられるのもこれが最後やのに」

聞き慣れた声に振り返ると、凛子が立っていた。

「凛子⁉︎」

イクラと一緒に驚いた。

「そんなに驚かんといてよ。違う高校に通うけど、あたしのこと忘れやんといてな」

凛子はそう笑った。それに対して僕も

「忘れたりせんよ」

と笑った。

 卒業式は退屈だ。特に卒業生は立って礼して座るという単純作業の繰り返しなのだから。入場する時点で泣いている生徒もいるのに、僕は冷たいのだろうか。

 そして、担任の先生に名前を呼ばれる時間が来た。

「朝倉 凛太朗」

松岡先生に名前を呼ばれ、「はい」と返事をして立ち上がった。僕は淡々としているが、先生はすでに裏声だった。こんな状態で最後の生徒の時まで持つのだろうか。

 僕はそう思いながらステージに上がり校長先生から卒業証書を受け取った。

「いだくら きゃなめ(板倉要)」

もうボロボロになっている先生を尻目に、イクラは元気よく

「はーい‼︎」

と返事をして元気よく卒業証書を受け取りに行った。

「ぎゃねご ゆが(金子由嘉)」

「はい」

由嘉さんは淡々と卒業証書を受け取りに行った。この可愛い姿を見ることももうないんだよな。何だか複雑な気分だ。

「わあだ ゆりぐぉ(若田有莉子)」

「…はい」

僕のクラスの出席番号最後の生徒は、先生がまともに呼べなかったせいで、本当に自分の名前が呼ばれたの?という感じできょとんとしていた。

 もう先生は泣きすぎて、僕ら3組の生徒全員の名前を読んだ後は嗚咽が聞こえそうなくらい泣いていた。流石に他のクラスの先生はそんなことはなく、ちゃんと生徒の名前を呼んでいたが。

 そして式の送辞を読んだのは、なんと大和の彼女の撫子ちゃんだった。撫子ちゃんははっきりとよく聞こえる声で、滑舌良く送辞を読んでいった。最後には涙も浮かべていたが、松岡先生みたいにはならなかった。

 僕は改めて、何でこんな出来のいい女の子が従弟の大和と付き合ったのだろうと疑問に思った。

 そして、答辞を読んだのは、生徒会長をしていた凛子だった。実は凛子「生徒会に入って内申点を稼ごうとするやつらの邪魔してやる!」と言い生徒会長に立候補し、ダントツで選ばれたのだ。

 凛子は上部だけでなく本当に積極的な活動をして学校を良くしていったので評判が良かった。

 凛子が答辞で

「私は前期試験で合格した工業高校に進学します」

と読んだときには、会場がざわついた。

「凛子先輩が工業⁉︎」

「普通高校やと思ってた!」

そんな声が聞こえた。確かに、凛子はやり手生徒会長だったし成績も良かったから、少し意外だったかもしれない。

「私はこれからも勉強も陸上も頑張ります。皆さんも、これから頑張ってください。本当にありがとうございました」

答辞を読み終えた凛子は涙を流しながら笑った。

 式が終わり、クラスに戻った後3組の生徒たちは

「先生、泣きすぎやよー」

と口にした。

「だって、ええクラスやったから、寂しくて…」

そんな大袈裟な…と思ったが、先生はまた泣いていた。

「じゃあ、記念に黒板に寄せ書きして全員で写真を撮ろうよ」

クラスメートの1人がそう切り出し、みんなで写真を撮った。

 最後のホームルームの後、僕らは外へ出た。

「先輩たち、卒業おめでとうございます!」

撫子ちゃんが走りながら僕らのところにやってきた。

「撫子ちゃん、ありがとう。送辞、良かったよ」

僕らと一緒にいた凛子が撫子ちゃんに言ったので

「ありがとうございます。凛子先輩の答辞も感動しました」

と嬉しそうだった。

「本当⁉︎良かった」

凛子はそう安心したようだった。

「私、ずっと凛子先輩に憧れているんです。先輩が卒業するのは寂しいですけど、私も先輩みたいになれるように頑張ります」

撫子ちゃんがそう話し涙した。

「そんな、あたしみたいにならなくてもー」

凛子はそう謙遜したが

「ありがとう」

とお礼を言い撫子ちゃんの手を握った。

 そう、僕らは良くも悪くも同じ場所に留まることはできない。でもそれは決して悲しいことではない。生きている上で、また新しい出会いが待っているのだから。

 式に来ていたハゼの叔父さんが

「よし、4人の写真を撮ろう」

と提案した。

 僕はイクラ、ハゼ、凛子と並んで肩を組んだ。まずはこの状態で1枚。

「じゃあ次は、俺が掛け声をするのでそのタイミングで撮ってください」

イクラがそんなことを言い出した。

「行くでー、こーのしはいからの…」

イクラが突然下手くそな歌を歌い出した。最初は何を歌っているかわからなかったが、これはきっと尾崎豊の曲だ。僕ら4人は続けて叫んだ。

「卒業ー!」

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