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志望校

 中学3年生になってから、実力テストの回数が増えた。成績には入らないが偏差値がわかる大切なテストだと聞かされた。実際、このテストの結果から出る偏差値は志望校を検討する上で役に立った。

「凛太朗はもう志望校は決まった?」

実力テストが返ってきた日の夜、志望校を記入するプリントを見ながら母さんに聞かれた。

「今はまだ決めてへん。消去法になるかな」

僕は受験できる高校の一覧表を見ながらそう答えた。

「私は偏差値にはこだわってへんし、凛太朗が希望する高校へ入れるよう後押ししたいけど、評判の悪い学校や極端に偏差値の低い学校には入ってほしくないな」

母さんは僕にそう話した。

「うん、僕も入りたくない」

僕はそう頷いた。それに対して母さんは、レベルの低い学校に横線を引いた。

「偏差値が高ければええとは思わんけど、僕は将来母さんの医院を継ぎたいから、この学区で1番優秀な高校がええやろか」

僕はそう自分の思いを話した。

 母さんは祖父が開業した小児科医院を引き継いでいる。敬愛する祖父が開いた医院を、僕も引き継ぎたいと思ったのだ。僕は特別子供が好きというわけではないが、1級下とはいえかなり世話の焼ける従弟を実弟同然に面倒を見てきたから、ある程度子供への理解はあるつもりだ。

「うちの医院を継いでくれるの?嬉しいけど、無理強いはせんよ?」

母さんは、少し驚いてそう話した。そのため僕は不安になって

「僕に小児科医は向いてへんやろか?」

と聞いた。

「いや、そうは思わんけど。じゃあ、その高校を第一志望に書くね」

母さんはそう答え、プリントの第一志望が埋まった。

「医学部目指すなら、やっぱり理数科?」

母さんにそう聞かれた。

「うん。じゃあ、第二志望はそこの普通科でもええかな」

僕はそう話した。そうして第二志望も埋まった。

「父さんが通っていた男子校も少し考えとる。あそこもレベル高いし、女子おらんのは気楽そうやし」

僕はそう続けた。

「それもええな。お父さんから高校の話も聞けるし」

母さんはそう言いながら第三志望を記入したため、これで提出できる状態になった。

 と言ってもまだ高校のことはわからないことが多い。僕は成績は上位にいるが、だからよりどりみどりとは思わないし、ちゃんと勉強しないと他の生徒に追い越されてしまう。


 こんなことで高校は選んではいけないと思いながらも、仲間達の志望校が気になった。母さんと志望校について話し合った翌日、僕は志望校のプリントを提出し、昼休みにハゼ達と志望校の話をした。

「工業高校に興味があるけど、普通高校に入るつもりは全くない」

ハゼと凛子は揃ってそう答えた。

 ハゼは

「自動車整備士とか興味あるし、男子が多くて気楽そう。就職もできるし」

と話していた。

 一方凛子は

「運動部も盛んやし、将来化粧しなくていい仕事に就けそう」

と話していた。

 そんな中イクラは

「商業高校に入りたい!女子が多いし、女子の制服が可愛いし」

なんて話していた。男子が商業高校に進学するのはいいと思うけど、そんな理由って…

「冗談やろ?」

僕は呆れながらそう聞いた。

「え、あかん?でも、由嘉ちゃんも商業高校を目指しとるみたいやで」

イクラがそう話した。

 なるほど。由嘉さんには、男子が少ない高校は合うかもしれない。なら、自分は高校進学をきっかけに由嘉さんの視界から姿を消そう。そう思い、商業高校には入らないと決心した。


 その2週間後、私立高校の説明会があった。第一希望ではないが受験の可能性はあるため、配られた資料をしっかり読まないと。

 しかし、説明会は昼休みの直後だったため、眠気を感じてしまった。高校の先生の話を聞こうと頑張ったが、ついうとうとしてしまう。話を聞くのも楽ではない。

 しかし、僕はまだましだろう。隣の席のイクラは僕の肩に寄りかかって寝ているどころかイビキをかいている。

「起きろイクラ、せめて僕の肩から離れろ」

あまり大声を出せないので、イクラの上半身をさすった。

「姉ちゃんうるさい」

イクラがそんな寝言を口にした。誰が姉ちゃんやねん。

 そんなイクラの寝言を無視して学校案内に目を通した。しかし、まだ総合学科と普通科の中高一貫校の違いや、制服や所在地しかわからない。それぞれ違いはあるのだろうけど。

 そんな中、志望校として書いた父さんの母校の説明もあった。男子校というところは父さんの在籍していた頃から変わっていないだろうけど、校風は時代とともに変化しているかもしれない。

 それにどこの高校も、生徒を集めるためにいいところしか話さない。入ってからでないと、実際の高校の様子はわからない。

 そうして説明会は終わったが、イクラはまだ僕の肩で爆睡していた。

「おいイクラ、いい加減起きろ!みんな教室に戻っとるで」

僕はそう叫んだが、イクラは一向に目を覚さない。デコピンしてもツンツンしても起きなかったので、耳に息を吹きかけたらやっと起きた。

「もう何だよ姉ちゃん、気持ち悪いな」

イクラはそう言っているので、頭はまだ寝ていると呆れるのだった。

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