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◆ 第1部 禁忌の森と電子の工房  【1−2】

第二話はほんと悩みました。話の中で登場させる街灯システムの描写を考えるのでつまづいていました。

初稿ではもっと実際の回路を考えていたのですが、何度も書き直し、相談相手のChatGPTと協議してやっと書き進むことができました。

第二話 鳥瞰からの探索


自分の身に起こっている境遇に打ちひしがれながらも工作室に戻ると、すべての機械が沈黙していた。

冷蔵庫の駆動音も、NASのファンも、エアコンの送風音すらない。

「・・・・・・停電か?」

災害用のラジオの電源を入れるAM波、FM波、短波どこからも放送が聞こえてこない。


直哉の家は、数年前から噂されている南海トラフ地震に備えるため太陽光発電、NAS蓄電池、雨水集積とその浄化システムなどなどの災害対策が施されていた。

家の外観を見て周りに異常が無いことを確認し、災害対策の装置類にも影響がないことを目視で確認した。

直哉はブレーカを確認し、慎重にスイッチを上げた。

カチリと音がして、室内にわずかな振動と共に電力が戻る。

冷蔵庫が低い唸りをあげ、NASのLEDが順に点灯した。

発電・蓄電を監視するコントロールパネルが電気システムの正常を報告しだした。

(よし、復旧・・・・・・。太陽光パネルも生きてるな。ただ、蓄電容量には限界がある。無駄な電気は切っておこう)

彼はひとつひとつ家中の電化製品の電源コンセントを抜いて回った。

最低限必要なのは冷蔵庫と工作室の機材、そしてパソコン。それだけだ。

次に食料の棚卸しを行った。冷凍食品、乾麺、米、缶詰、スナック菓子、飲料水などなど。

計算すると、二か月は何とかなる量があった。

(とりあえず近々の餓死はない。問題は水だな・・・・・・)

窓の外に目をやると、夕暮れが森を朱に染めていた。

水源の探索は明日に回そうと決めたとき、ふと気づいた。

廃墟の石柱の方に、ほのかな光が灯っているのが見えた。

「・・・・・・人?」

思わず身構え、武器になるものを探す。スポーツなどしない直哉にとってバットなどの気の効いたものはなく基板に穴開ける時の目打ちをするための金槌が目に入った。

頼りないが、丸腰よりはマシだ。恐る恐る金槌を手に外に出てみる。

だがそこに人影はなく、光っていたのは石柱そのものだった。

二メートルほどの高さの位置に、まるで街灯のように柔らかな光がともっていたのだ。

「・・・・・・街灯、なのか?」

直哉は眉をひそめた。だが深追いはせず、その夜は明日の行動予定をノートに書き出し、余分な電気を使わぬよう早々に寝床についた。




翌朝。


直哉はドローンとノートPCを携え、玄関を出た。

まずは空から状況を掴むのが先決だ。

ドローンのカメラがまず直哉の家の周辺を映してみた、家と廃墟を中心に近隣の学校ほどの空き地が広がっていた。

余分に購入していた太陽光パネルを設置する余裕はあることを確認し、ドローンカメラが映し出す風景をテキストエディタにメモしていく。

次に森全体を確認するためにドローンを水平回転させる。カメラが映し出した景色は、どこまでも続く原生林だった。

北西方向には木々の奥に高い尾根を連ねる山々。文明の影はどこにも見えなかった。煙の一筋も上がっていない。

遠くに鳥の群れが飛んでいるところが映し出された。

ドローンのカメラを空き地周辺から数百メートルの範囲内を映し出しながら何周か回転させると、木々の間に、きらめく光の筋が走るのが映った。

「・・・・・・川か? 距離は・・・・・・500メートルってとこか。」

「この足で直接確かめるしかないか。」


ドローンを回収して、直哉は家の屋上に上がると、三脚に取り付けた簡易アンテナを立てた。

アンテナの基部には、中古ショップで手に入れた特小トランシーバーを改造した送信機。

それをモバイルバッテリーにつなぎ、さらに自作の昇圧回路を介して電圧を安定させる。

「これで送信出力は・・・・・・まあ十分だろう。」

アンテナは、伸縮式のアルミパイプと銅線を組み合わせた即席のダイポール。

同調は完全ではないが、数百メートル程度なら探知可能だ。

周囲には文明らしき電波ノイズが皆無で、かえってクリアに信号を飛ばせる環境だった。

受信機を手に持ち、ピーというビーコン音が返ってきたのを確認して頷く。

これで川を探索する間、迷っても確実に帰ってこられる。

赤いビニールテープ、小型受信機とアンテナ、空のペットボトル数本、ボディカメラ。即席の探索装備を整えて森へ踏み入る。

歩くたびに木に赤いテープを巻き、受信機で家からの発信機のビー音を確認しては帰路を刻む。

やがて水の流れる音が聞こえてきた。十五分ほど進むと、視界が開けた。


川だ。


澄んだ水が勢いよく流れている。直哉はしゃがみこみ、手ですくって一口飲んでみた。

「・・・・・・飲めるな。あとで水質を詳しく確認するか。」

持参したペットボトルに水を詰めていると川面に魚が飛び跳ねるのが見えた。

「川魚を獲って食料にできるな。」

持参したペットボトル全てに水を詰め終わったので帰路につく。

途中、リスのような小動物を目にした。そいつは素早く木を駆け上がり、赤い果実にかぶりついた。

「・・・・・・リンゴ? 食えるかもしれないな。」

近くの枝を折り、実をいくつか収穫する。

実の一つを手に取って確かめるがリンゴというよりもマンゴーに似た実だった。

実を採取するために使った枝の断面を見て驚いた。竹のように中が空洞だったのだ。

「・・・・・・こいつは使えそうだ。」

枝を杖代わりにしながら帰宅した直哉は、ペットボトルと採取した実をキッチンのテーブルに置き、次は工具を抱えて廃墟の石柱へ向かった。

脚立を立て、昨夜光っていた部分を調べる。マイナスドライバーの柄で軽く叩くと、カン、と石柱の中が空洞を指し示す音を響かせた。

「・・・・・・ここだな。」

空洞の周りを隈なく探すとうっすらとした筋を見つけることができた。

微細な割れ目にドライバーの刃を差し込み、ぐっと力を込めると、外装が外れた。

内部に覗いたのは――人工的な構造物。

「・・・・・・装置?」

石柱の中には、確かに“何かの機械”が埋め込まれていた。


石柱の中に埋め込まれた“装置”は、微かな振動とともに脈打つように光を放っていた。

まるで、彼の訪れを待ち望んでいたかのように。

直哉は思わず息を呑む。

「・・・・・・いったい、これは・・・・・・?」

次の瞬間、胸の奥に不思議なざわめきが広がった。

それが希望か、不安か、あるいは――未来への呼び声か。

次は謎の女が再登場します。多分。

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