5話 黄昏の中で青空をさがす(みゆき)
てってーてきにヘータンな日常は、すぐに9月を連れてきた。
ある日曜日の昼間、みゆきはパパが隣のおばちゃんの水道を
見に行っている間、金物屋の店番をしていた。
「あー。
超絶イケメンが釘でも買いに来ねぇかなー。
オススメ教えてやんのによー」
イケメンどころか、
誰も来なくて本当にヒマな店である。
とくにやることもないので、ケータイをポチポチやって、
友達にメールを送っていた。
「おっ・・・」
めずらしく誰かが入って来たと思ったら、
あの転校生だった。
彼女は周りをブッショクしつつ、
店内をうろうろしはじめる。
女子高生が金物屋になんの用事だ。
みゆきは訝しんだ。
「んぉおお・・・?」
転校生は同じ場所を行ったり来たりしている。
あきらかに動きがアヤシイ。
みゆきがケータイを見るふりをしながら観察していると、
慶子がキーホルダーコーナーでコソコソした。
「・・・あっ」
彼女は小さな何かを取ると、素早くポケットに入れた。
万引きだぁ間違いないぞ。
バタバタと出て行く転校生を見送ると、
みゆきはキーホルダーコーナーへ赴いた。
「いやー。
万引きなんてはじめて見たなぁ~」
何を盗ったのかはすぐにわかった。
「ああ、コレか」
音符の形をした小さなキーホルダーがひとつ減っていた。
以前みゆきがカタログから選んだ商品だ。
客の大半がおじさんの金物屋では、
この可愛いキーホルダーは全く売れなかったのだが、
記念すべき1人目の購入者が、
『幸薄根性ナシ転校生』の万引きとはよくデキている。
「ふーん・・・」
みゆきは部屋に戻ると、貯金箱から1250円を出した。
ちょうどキーホルダーと同じ値段だ。
「・・・ふへへ。でへへへ」
みゆきは気持ちの悪い笑みを浮かべながら店に戻り、
レジを打って金を入れると、レシートをちぎった。
いやー面白くなりそうだ。
翌日。
みゆきは3時間目の休み時間に、
転校生の席まで行った。
「おい」
「な・・・なんですか」
転校生が突然、キョドウフシンになる。
思いきり顔を近づけた。
「わかってんだろ。
昼休みに音楽室に来い」
勝ち誇って言うと、転校生はケーサツに見つかった犯罪者
みたいな顔になった。
いま、あたし最高に楽しんでる。
あー昼休みが待ち遠しい。
弁当をかき込むと、すぐに音楽室に向かう。
彼女はもうすでにいた。
コイツ飯を食わずに来たのか。
真面目というか、律儀というか。
アニメみたいに「ああ・・・来たのかい」ってカッコつけて
振り返るつもりだったのに、アテがはずれてしまったじゃねぇか。
仕方なく頭をボリボリ掻きながら転校生に近づいた。
「おまえさ、うちの店で万引きしただろ」
「し、してません」
みゆきはポケットの中からレシートを出した。
「あたしが払った。
1250円。ウチの親には言ってない」
レシートをピアノの上にバシっと叩きつける。
キマった。
昨日の夜、何度もシミュレートしたやり方だ。
もう言い逃れはできまい。
カンペキにキマったみゆきの目の前で、
転校生は「はわわ」と声をあげた。
はわわって何だよ。
「いやさぁー。金なんかどうでもいいんだよホント。
気になってることがあるんだよねー」
みゆきはニヤニヤしながら転校生の首に腕を回した。
彼女は、なんというか、親の敵を見るような目をしていた。
「なにが、目的なんですか?」
「おまえピアノ弾けるだろ? 弾いてみせろよ」
「・・・やめたんです。ピアノは」
「じゃあ、なんでココにいたんだよ?」
「・・・それは」
あーもうこの時間がもったいない。
めんどくさい。
「弾けったら弾け。
やらないと、万引きしたってみんなに言うぞ」
「そ、そんな・・・」
「おまえさ、もう観念しろよ」
「・・・おまえじゃない。慶子です」
慶子が反抗的な目で見てくる。
あれ、わりとやるなコイツ?
「じゃあケーコ。
さっさと弾け。ちなみに、この曲な」
みゆきはラジカセを引っ張り出してきて、
お気に入りの曲をかけた。
ありがとうございました。
次話もよろしくお願いいたします。