エピローグ3
今年になって、セイリュウ神社と鉱山跡を観光コースにくわえた。
日和が暖かくなったこの頃、この二カ所にも足を延ばす観光客が増えている。
セイリュウ神社までの遊歩道にはツツジとアジサイの苗、清流池の周囲にはアヤメを植えた。それぞれ花の咲く季節には、観光客の目を楽しませることになるだろう。
遊歩道と神社内の掃除や草むしりは、喜八さん、ミツさん夫婦が受け持っている。
「あんた、そげにはりきらん方がいいって。また足が痛くなるんやから」
これは、ミツさんの最近の口ぐせだ。
「さい銭がたまったら、すぐにでん傷んだところを直してもらわんとな」
これは、喜八さんの最近の口ぐせだ。
神社の補修には多額の費用がかかる。
以前は徳治さんが、総代として豊後森の宮司にかけあっていた。ところが徳治さんがボケてからというもの、しばらく補修が遠のき、あちこちが傷んでいたのである。
続いて鉱山跡。
こちらは坑道の入り口近くに簡易な切符売場の小屋を建てた。
そこではおツネさんとお夏さんの二人が、訪れる観光客を相手に切符売りをしている。
小屋の横には鉱山の歴史を記した看板、坑道の構造を描いたパネルが立てられており、そこから周囲を見渡すと金を採掘していた当時がしのばれる。
鉱山会社の事務所跡地。
ベルトコンベアーの残骸。
採掘した金鉱石の貨物積載所。
雑草の繁る荒れた土地のいたるところに、繁栄の痕跡が今もなお色濃く残っている。それらは過ぎ去った時代に置きざりにされた遺物であり、栗原村が年を重ねた象徴でもあった。
ガイド役は庄太郎さんと弥助さん。両名とも閉山するまで山で働いていたので、当時の鉱山のことにはことさら詳しい。
現在、坑道内に入れるのは三十メートルほど。いずれ坑道内部もきちんと整備し、当時の採掘現場のようすを再現する計画を立てている。
鉄道、食堂、セイリュウ神社、鉱山跡。
どれにも観光客がわんさと押し寄せて商売繁盛だった。
―栗原村住人たちの紹介―
お夏さん……亡き夫が村の駐在所の駐在員であったことから、住人たちに頼りにされている。
弥助さん……鉱山が開業してからは農業をやめ、閉山するまで鉱山で働く。独り暮らし。
喜八さん……高齢のため足腰がめっぽう弱い。妻はミツさん。
ミツさん……喜八さんの妻。夫の体の具合をいつも心配している。
庄太郎さん……鉱山のダイナマイトの爆破事故で右手の手首から先を失う。
おツネさん……離婚して村にもどって以来、ずっと独り暮しをしている。




