ドングリ号に乾杯3
ドングリ号は今日、元作さんによって大分駅まで運ばれることになっている。たとえ拒否しても、いずれ鉄道会社の者によって運ばれる。そして、ばらばらに解体される日が来る。
わかっていても……。
守ってやることができない。
どうしてやることもできない。
「ドングリ号んヤツ、大分に行ったら鉄クズにされるんやのう」
「ああ……」
元作さんはうつむいたまま、のどから声をしぼり出すようにして答えた。
「あんまりやないか。こうなりゃ、最後まで戦うしかねえぞ。こわさるんのを、黙っち見ちょるなんちできんやろう」
ゴンちゃんが鼻の穴を広げ、みんなの顔を見まわして賛同を求めた。
「そんとおりや。なにしてでん、ドングリ号はワシらが守ってやるんや」
吉蔵さんも声を大きくした。
そんな二人に向かって、お夏さんがなだめさとすように言う。
「オメエらん気持はようわかる。けどな、こげな年寄りばかりや。いつまでも戦い続けるんは、ワシらじゃとうていできんことや」
お夏さんの言葉に、ゴンちゃんと吉蔵さんは言い返すことなくうつむいてしまった。いきがってはみたものの、無理からぬこと、はなからかなわぬことと、だれに言われずともよくわかっているのだ。
それでも元作さんはあきらめきれない。
「ドングリ号がおるやないか。ドングリ号がなんとかしちくるんはずや」
「いつまでも夕べんように、うまくいくちゃあ限らんやないか」
お夏さんはそう言ってから、全員の顔をグルッと見まわした。
「そやから言うちこんままじゃ、ドングリ号がどげんねえかわいそうや。だれともケンカせんで、こん村に残るん方法がねえか……なあ、みんな。よう考えちみようやないか」




