万歳! ドングリ号4
流線形の車体が、時速三百キロのスピードでドングリ号を追う。そしてそれは、ドングリ号との差を着々と詰めていた。
「とばせー、とばすんだー」
この声は総隊長のもの。
新幹線の操縦室の中、総隊長が椅子から身を乗り出し前方を見すえている。
「ヤツが見えました。三百メートルほど前方で、三分もあれば追いつきます」
運転士が報告する。
「追いついたら追突させて、線路の外にはじき飛ばすんだ」
「了解しました」
「ヘリ部隊に現在位置を連絡しろ」
総隊長の口元がニヤリとする。
特殊部隊の乗った新幹線は、ドングリ号の後方およそ百メートルまで一気に追いあげた。その間隔が、みるまに五十、四十メートルと縮まる。
と、そのときである。
ドングリ号が青い炎を放ち始めた。
「総隊長、またあの青い光です」
「かまわん、追突させろ」
「了解」
運転士がスピードをあげる。
しかるにどうしたことか、間隔が十メートルとなって、その差はいっこうに縮まらない。
「スピードをあげるんだ!」
「すでに三百キロを超えております」
「そんなバカなことがあるもんか。たかが蒸気機関車なんだぞ」
「これが限界です」
その差が、二十、三十メートルと開いてゆく。
「とばせー、とばすんだー」
総隊長の必死の叫びもむなしく、蒸気機関車との差はますます広がっていった。
青い光はやがて小さな点となり、はるか前方の闇に消えてしまったのだった。




