ドングリ号 危機一髪9
シュッ、シュッ、シュッ。
青い炎につつまれたドングリ号が、その足元から白い蒸気を勢いよく吐く。
シュッ、シュッ……。
蒸気を吐く間隔が短くなる。
ギィー、ガタッン。
ついには車輪をまわして前進を始めた。前方は敵の列車でふさがっているにもかかわらず……。
ガタッ、ゴトッ……。
十メートルほど進んだところで、機関車が頭を持ち上げ、斜め上に向かって上昇を始めた。
それからすぐに。
プラットホームに機関車の車輪が現れる。
「うおー」
隊員およそ百名、全員がそろっておどろきの声をあげた。
かたやドングリ号。
機関車の先端はすでにプラットホームの屋根の上に浮いており、客車の最後尾の車輪もレールから離れようとしていた。
「撃てー、撃てー」
総隊長は気が狂ったように、プラットホームを右に左にと走りまわった。
バッ、バッ、バァーン。
絶えまない銃声が、連続花火のように夜空に鳴り響く。だがいくら撃てども、銃弾は青い炎にはじき返されるばかりであった。
蒸気機関車はそれからも上昇を続けた。まるで星空へと続くレールが、そこにあるかのように……。
青い炎が天空に向かってゆっくり上昇する。
青い炎が半円を描くようにして上昇する。
地上から百メートルほどはなれた上空。
青い炎の車体が地面と平行になった。
汽笛の音が長く夜空に響きわたる。
そしてそれは一瞬のことだった。
蒸気機関車が夜の闇に消えた。
天空に青白い筋を引き……。
まるで流星のごとく……。




