ドングリ号 危機一髪8
一方、駅構内では……。
多くの特殊部隊員がドングリ号を取りかこみ、その中心には総隊長が陣取っていた。
「狙撃体勢に入れ!」
総隊長は命令してから片手をあげた。
数名の隊員がドングリ号に向かって横に並ぶ。
「まずは威嚇射撃だ。撃てー」
総隊長があげていた手を振り下ろした。
同時に。
バッ、バァーン。
複数の銃声が夜空に鳴り響いた。
だが、一人として蒸気機関車から降りてこない。
車窓に姿さえ見せなかった。
「動きませんね」
「ヤツらにはダイナマイトがある。こっちがうかつに近づけんと思って、ナメてやがるんだ。一発、本気なところを見せてやれ」
「わかりました」
隊員の一人が客車に狙いを定めて引き金を引いた。
バァーン。
銃弾が車窓に命中して、客車の窓ガラスが音を立てて砕け散った。
「総隊長殿、おどしがきいたようです。一名、姿を見せました。手を振って、なにかわめいているようであります」
「見せしめに、ソイツだけでも撃ち殺してやれ」
「あっ、消えました」
隊員が短く叫ぶ。
と、そのとき。
ドングリ号が青い炎を放ち始めた。
青い炎が機関車と客車の両方をつつみ込んでゆく。
この不思議な現象に……。
隊員たちはみなが銃を下ろし、それまでの狙撃の体勢をくずしていたのだった。




