ドングリ号 危機一髪7
―栗原村住人たちの紹介―
元作さん……十七歳のとき、栗原村に来て鉄道会社に就職。以来一筋、蒸気機関車ドングリ号に乗る。
お夏さん……亡き夫が村の駐在所の駐在員であったことから、住人たちに頼りにされている。
新吉さん……村では一番若く六十歳。元作さんとともに日ごろから村の世話をする。
「うしろもやあー。うしろからも、いっぱい列車が入っちきたぞー」
列車の大群が、後方すべての線路をびっしり埋め尽くしている。
前方には総隊長の部隊。
後方には分隊長の部隊。
前後の二つの特殊部隊によって、ドングリ号は行く手を完全にふさがれてしまった。
「前と後ろ、両方からぶつける気なんや。こりゃ、もう降りるしかねえぞ」
元作さんはあわてて次の指示を出した。
「ドングリ号ー、すぐにドアを開けるんやー」
「みんな、降りるよー」
お夏さんも叫ぶ。
全員が席を立ち、バタバタとホーム側の乗降ドアの前に集まった。
だが待てども、ドアはいっこうに開くふうにない。
「ドングリ号ー、ドアを開けるんやあー」
元作さんの必死な声にも、ドングリ号はドアを開けない。
がんとして開けなかった。
絶体絶命!
だれもがそう覚悟したときだった。
キィー、キィー、キィー。
数多くのブレーキ音が構内に響き渡り、近づいていた前後すべての列車がいっせいに止まった。
そして間をおくことなく、それぞれの列車から銃を手にした戦闘服姿の男たちがぞくぞくと降りてきた。それからすばやい身のこなしで、それぞれホームの柱やベンチに身を隠しながら近づいてくる。
「みんな伏せるんや! すぐにやー」
元作さんの叫び声に、村人らはみな言われるままに床に身を伏せた。
「どうしたんや?」
お夏さんが顔を上げて問う。
「人がいっぱい降りちきたんやが、みんな鉄砲を持っちょるんや。そやけんドングリ号、ドアを開けんかったんや。さすがやなあ」
この危機的な状況にあっても、元作さんはドングリ号に感心している。
「なあ、どうするんや?」
新吉さんが元作さんに這い寄った。
「どうちゅうことねえ。なんたちオレらには、このドングリ号がついちょるけんな」
「けどな、今度ばかりはピクリともせんぞ」
新吉さんの言うとおり、それからもドングリ号はじっとして、まったく動こうとしなかった。




