ドングリ号 危機一髪6
かたや車内。
急ブレーキのショックに、住人全員が目をさまし飛び起きた。
「おー、どうしたんや?」
「なんで、止まったんじゃろう?」
「駅やぞ」
「えれえ大きな駅やのう」
車窓に顔をつけて外を見ている者。
立ち上がって外を見渡している者。
何事が起きたのかと、それぞれが駅構内のようすをうかがっている。
「元作、なんちゅう駅や?」
お夏さんが目をもどして聞いた。
「小倉駅や」
「なして小倉で止まるんや。そのまま博多ん方に行くんやなかったのか?」
「わからんが、こうして止まったところをみると、またなんかあったんや」
元作さんは窓から首を伸ばし、駅構内の遠くまでうかがい見た。
するとだ。
前方の闇の中に、横一列に並んだ列車の隊列があった。しかもどれもがライトを消し、こちらに向かって忍び寄るように近づいてくる。
「変な列車がいっぱい近づいちくるぞ」
「なんやとー」
ゴンちゃんも反対側の窓から顔をつき出し、ドングリ号の前方をのぞき見た。
列車の隊列が向かってきている。
これこそが特殊部隊の本隊で、小倉駅の構内でひそかにドングリ号を待ち伏せていたのだ。そしてこの本隊には、特殊部隊の作戦すべての指揮をとっている総隊長がいた。
「列車、こん線路の上にもおるやないか。こんままじゃ、ぶつかるんやねえのか」
「ああ。ドングリ号んヤツ、それで止まったんや」
「ヤツら、どんどん近づいちくる。まったく止まる気がねえみたいやぞ」
「衝突させる気やなかろうか。念のためにバックさせるわ。ドングリ号ー、バックや、バックしろー」
元作さんが機関車に向かって叫んだ。
ブゥオー。
ドングリ号はすぐさまバックを始めた。
けれど、怪しい列車の群れとの差が広がらない。むしろ接近している。近づく敵のスピードの方が速いのだ。
「ドングリ号ー、もっと速くー、速くやー」
元作さんが必死に叫ぶ。
しかしどうしたことか、ドングリ号は元作さんの号令にそむき、反対にブレーキをかけ始めた。
スピードが一気に落ちる。
キィー、ギィー、ガッガ、ガー。
ドングリ号が止まった。
自らの意志で止まり、そこでピクリとも動かなくなってしまった。
―栗原村住人たちの紹介―
元作さん……十七歳のとき、栗原村に来て鉄道会社に就職。以来一筋、蒸気機関車ドングリ号に乗る。
ゴンちゃん………栗原村の最後の駐在員。栗原村が気に入り、そのままいついている。




