ドングリ号 危機一髪4
ドングリ号は走っていた。
ガタッ、ゴトッ、ガタッ……。
今夜かぎりの走りを楽しむかのように……。
ガタッ、ゴトッ、ガタッ……。
若かりし日々をなつかしむかのように……。
ガタッ、ゴトッ、ガタッ……。
住人たちとの別れを惜しむかのように……。
そして……。
力強く、力強く走っていた。
果てしないパワー。
限りないエネルギー。
生命を宿し、自らの意思を持つといった、人智を超えた大いなる力。
この大いなる力を、栗原村の住人たちはドングリ号の不思議と呼んだ。
自分たちの意思だとも思った。
この不思議とは?
つい数時間前、夜空に一筋の青白い線をひいて流れた、ひとつの流れ星からすべてが始まる。
遠い宇宙から飛来した、星のカケラ。
たしかなる目的を持ち、セイリュウ神社をめざし飛んできた、星のカケラ。
それは宇宙の神秘、宇宙が秘めたる大いなる力であった。
星のカケラが清流池に到達したとき、村の守り神である青龍の魂が長い眠りから目をさました。そして青い光の筋となって舞い昇り、駅舎に停まっていたドングリ号の内に宿ったのである。
このとき。
ドングリ号は自らの意志を持った。
ドングリ号は大いなる力を持った。
青龍の魂を宿し、人智を超えた蒸気機関車となったのだった。




