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ドングリ号 危機一髪1
ガタッ、ゴトッ、ガタッ……。
ドングリ号が北九州の町並みに入った。
この町はいつもなら、明け方まで明かりが消えることはない。
だが今夜は別だ。
沿線は暗く、眠ったように寝静まっていた。
テレビがこのような、ぶっそうなニュースを流し続けていたからだ。
『ダイナマイトで武装した列車ジャックは、沿線の町を爆破させながら、なおも日豊本線を北上中であります。このままでは沿線の町に、多数の死傷者が出るものと思われます。なお、警察の最新の発表によりますと、列車ジャックはテロである。このようなテロ事件に関しては、警察はいっさいの権限を持ち合わせていない。現在、国家テロ対策の特殊部隊に緊急出動を要請中、とのことであります』
だが、こんなことにドングリ号はおかまいなし。小倉の町を風を切って走っていた。
車窓から見える遠くの景色に高層ビルの群れが見え始め、町の中心部に近づいていることがわかった。その沿線には、雑居ビルや住居などがところ狭しと立ち並んでいる。
それらは闇の下でじっと息をひそめていた。
ドングリ号を怖れ、警戒して……。




