負けるな! ドングリ号2
KKKテレビ局のレポーターは自社のテレビカメラの前に立つと、両手でマイクをにぎりしめ、声を張り上げてしゃべり始めた。
「列車ジャックは、大量のダイナマイトで武装した栗原村の住民、およそ二十名であります。すでにいくつかの鉄橋を爆破し、非常に凶悪なテロ集団となっております。現在は日豊本線の大分県中部を北上中。沿線の住民の方々はただちに避難を開始してください。くり返し申し上げます。列車ジャックが、ダイナマイトを爆破させながら日豊本線を北上しています。みなさん、ただちに避難を始めてください」
ひたいに汗をタラタラ流し、ツバキを飛ばしながら記者会見の情報を伝える。
これはほかのマスコミ各社も同じ。
テレビやラジオを通し、ほぼ似たような情報を臨時ニュースとして、いっせいに流したのであった。
こうして……。
栗原村の住民たちは列車ジャックに、そして凶悪なテロ集団にされていたのだった。
そんなことは、当人たちはつゆも知らない。
夜の景色を楽しむ者。
酒を飲む者。
昔話に花を咲かせる者。
歌う者に踊る者。
それぞれがみな、列車旅行のような気分で盛り上がっていた。
ブゥオー。
ドングリ号はときおり汽笛を鳴らし、最後の夜を気持ちよさそうに走っている。
ところがまたしても……。
栗原村住人、そしてドングリ号に、新たなる危機が待ち受けていたのであった。




