負けるな! ドングリ号1
時刻は午前一時をまわる。
鉄道会社は大分駅の中に列車ジャック対策本部を設置して、ただちに緊急記者会見を開いた。
会見室に集まったマスコミ関係者を前に、本部長が神妙な顔つきで説明を始める。
「えー、列車ジャックはおよそ二十名。すべて栗原村の住民であると聞いております。えー、非常に危険な集団となって現在もなお、日豊本線を北上しているもようであります」
「列車ジャックは栗原村の住民だそうですが、今回こうしたことが起きた原因はなんだと?」
KKKテレビ局のレポーターが、並べられたパイプ椅子から身を乗り出すようにして質問した。
「えー、それにつきましては、今のところなにもわかっておりません。えー、できたらわたしも、彼らに聞いてみたいぐらいでして」
「ダイナマイトで武装しているそうですが?」
「そのように聞いております。えー、現場からの報告によりますと、えー」
本部長はスティックを手に立ち上がり、ボードに貼られた大分県中部の拡大地図をさした。
「えー、ここが七瀬川鉄橋の位置でありますが、ダイナマイトで、えーそう、大量のダイナマイトで鉄橋を爆破したもようであります」
「なんの目的で爆破したと思われますか?」
「えー、それはおそらくですね。後方からの追跡をかわすためだと。えー、今のところは、そのように推測しているしだいであります」
「では今後も、ダイナマイトを使う恐れがあると考えられますね」
「えー、おそらく、たぶん。できたらそれも、彼らに聞きいてみたいところでして」
「そのような非常に危険な列車ジャックに対し、今後どのように対処されるんでしょうか?」
「それは警察の方々とも、えー、これから十分に協議をいたしまして。ですから、えー」
「これから協議ですって! それではまだ、今後の方策が決まってないんでしょうか?」
「えー、それはこれから」
「遅すぎやしませんか。事故が起きたら、どのように責任をとるつもりですか?」
「まあ、それもこれから、えー」
本部長はいきなり席を立った。それから逃げるように会見室を出ていく。




