走れ! ドングリ号6
さて、ドングリ号の車内。
そこには酒とつまみが広げられ、栗原村の住人たちは大いに盛り上がっていた。
「顔見知りの駅員がおったんで、手を振ってやったらポカンとしちょったわ」
元作さんの顔はうれしそうである。
「ワシも手を振ってやったぞ」
吉蔵さんもこぼれんばかりの笑顔だ。
「なあ、元作さん。ドングリ号のヤツ、石炭をやらんのに長げえこと走りよる。燃料がねえんに、なんで走れるんかのう?」
ドングリ号の不思議について、新吉さんがいまさらのように問うた。
「そいつがな、さっぱりわからんのや。けどな、こうしち走りよん。それにな、オレらん気持ちまでわかっちょる。考えちみたら、そん方がよほど不思議やねえか」
元作さんは答えてから、酒の入った湯呑茶碗をうまそうに飲み干した。
「のう、新吉。元作ん言うとおりやで。こうしち走りよんのだけはたしかや。それだけでいいやないか。ほら、飲めや」
新吉さんの湯呑茶碗に酒をついでから、お夏さんは言葉をしんみりと継いだ。
「ただな、ドングリ号ん気持ち、ワシにはようわかるんよ。まだ走れるんに引退するなんち、こげえにつれえこつはねえ。こわれてもねえのに走れんようになるんは、たまらんことや。……ただ走りてえから、こうしち走りよるんや」
ドングリ号の不思議を人生に例えて説いた。さすがお夏さん、年の功だけはある。
「そんとおりやぞ、新吉。ドングリ号はまだまだ走りてえんや」
吉蔵さんもうなずいてみせる。
そのドングリ号、大分の町に向かって走り続けていた。
満天の星の光を背に浴びて……。




