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走れ! ドングリ号4

 豊後森の小さな町並みに入った。

「走れー、ドングリ号ー」

 熱気みなぎる老人たち、全員が立ち上がって叫んでいる。

「走れー、ドングリ号ー」

 豊後森の町並みを両脇に見ながら、車内は走れコールの大合唱が続いた。

 ドングリ号はスピードを落とさない。

 ブゥオー。

 汽笛を一発おみやげに残し、豊後森駅の構内を一気にかけ抜けた。そして進入したのは、大分駅へとつながる久大本線の上り路線であった。

 久大本線がローカル線で、たとえ今が真夜中とはいえ、貨物列車ぐらいは走っている。しかも線路は単線である。

 ヘタをすれば、大分方面からやってくる貨物列車と正面衝突だ。

 これでは事件にならないはずがない。

『緊急事態、発生。ただいま大分方面に向かって、栗原村引込み線専用の蒸気機関車が暴走中です』

 豊後森駅から大分駅へと、すぐさま第一報が発せられたのだった。


 ところかわって……。

 ここは大分駅の構内にある鉄道会社の運行システム中央制御室。県内全域の列車の運行は、この部屋で統括管理されている。

『緊急事態発生。久大本線にて、蒸気機関車が大分方面に向かって暴走中。現在の位置は豊後森駅と由布院駅のほぼ中間あたり。衝突の恐れのある列車は、ただちに離合線、もしくはもよりの駅の安全な場所に非難せよ』

 係員のマイクを握る手が震えている。

 中央制御室には、ドングリ号が赤信号を無視するたびに、その情報が寄せられていた。

『たった今、由布院駅を通過。衝突の恐れのある列車はただちに非難せよ。乗客が乗っているところからして、列車ジャックの可能性もあると思われる。詳しいことは調査中』

 緊急召集された社員がぞくぞくと大分駅に集結しており、たった今、最高責任者である駅長もあわててかけつけてきたところだった。

 駅長はただちに中央制御室の室長とシステム制御の担当者を駅長室に呼びつけると、二人を前にして腹だたしげに声を荒げた。

「なんで、こんなことになったんだ?」

「説明いたします」

 室長は直立不動の姿勢で敬礼をしてから、これまでの状況からわかっていることを報告した。


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