ドングリ号6
こうして……。
元作さんの説明が終わろうとした、まさにそのときである。
ブゥオー。
五人の目の前で、ドングリ号が汽笛を鳴らした。それからついでとばかり、煙突から勢いよく煙まで噴き上げた。
百聞は一見にしかずである。
吉蔵さんとゴンちゃんはおろか、一同あぜんとして顔を見合わせることとなった。
「ほらな。さわってもねえのに汽笛が鳴った。それに今度は煙まで噴いた。なんとも不思議やろ」
「ほんと妙やのう」
吉蔵さんは小首をかしげ、ドングリ号の車体をなめるように見た。
そこにはいつもの見なれたドングリ号がある。
なにひとつ変わったふうもない。
「元作、なんか思いあたることはねえのか?」
「それがなんもねえんや。ただオレな、さっきからなんか……。ありえんことやと思うが、オレ、それでんなんか……」
元作さんがしきりに首をひねる。
「それでん、なんや?」
「汽笛のことやけど、オレな。ドングリ号んヤツが自分で鳴らしよんのやねえか、なんかそげな気がしてきたんよ」
「そう言われりゃ、なんとのうそうやなあ。なんもせんのに鳴るんも変やしな」
新吉さんがうんうんとうなずく。
「そんとおりやで。それになんか、ウチらに話しかけよるみたいやもんな」
ミツさんも追うように言った。
「ほんと、そうなんや。オレらん話しよんのが、まるでわかっちょるみたいやろ」
元作さんの、もしかしたらという思いは、もはや確信に変わりつつあった。
「だれのしわざでもねえんよ。汽笛を鳴らしたんはドングリ号なんや。みんなをここに呼ぶために、ドングリ号がな。それに客車の電灯つけたんも、オレらを歓迎する合図なんよ」
客車の電灯がついたことにも、元作さんは自分なりの考えを添えた。
「まさかそんなこともあるめえが……」
吉蔵さんはそう言いながらも、ドングリ号に向かって話しかけるように声をかけた。
「おい、ドングリ号。元作ん言うように、オマエ、ワシらをここに呼んだんか。じゃったら汽笛を鳴らすんやぞ」
いなや。
ブゥオー。
返すがごとく、ドングリ号が汽笛を鳴らした。




