ドングリ号3
たった今。
元作さん、新吉さん、ミツさんの三人が駅に着き、駅舎の中に踏み入った。
改札口を抜ける。
そしてプラットホームに立ったとたん、先頭にいた元作さんが前方を指さして叫んだ。
「あっ、あん光!」
ドングリ号の先端、機関室が青い半透明の光につつまれている。
「やっぱ、だれかが妙な悪さをしよるんや」
「そうみたいやな」
新吉さんが首を伸ばして構内を見まわす。
そこには薄い闇が広がるだけで、人の気配らしきものはどこにもなかった。
「元作さん、だれもいねえみたいやけど」
「たぶん機関室に入り込んどるんや」
元作さんは機関車に目をこらし、頭のねじりはち巻きを強くしめ直した。
と、そのときである。
ブゥオー。
汽笛を一声、ドングリ号が鳴らした。
「やっぱ、機関室の中や。汽笛を鳴らしち遊んでやがるんや」
元作さんが走り出そうとするのを、背後から新吉さんがとっさに腕をつかんで引きもどす。
「変なヤツやったらどうするんや。なにをさるんかわからんぞ」
「そうだよ、元作。気をつけた方がいい」
ミツさんも引き止めた。
「そんではあいつを……。ここでちょっと待っちょってくれ」
元作さんは速足で倉庫に行くと、そこからスコップ三本を両腕にかかえてもどってきた。
武器にしようというのである。
「もし手向かっちきたら、こいつでたたきのめしてやりゃいい」
「そりゃあいいや」
新吉さんはうなずくと、元作さんの腕から一本抜き取った。
ミツさんもスコップを手にする。
三人はそれぞれスコップをにぎりしめ、鉄砲でもかまえるようにしてプラットホームを進んでいった。




